ASIA center | JAPAN FOUNDATION

国際交流基金アジアセンターは、アジアの人々の間に共感や
共生の心を育むため、様々な分野で文化交流事業を実施しています。

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伝統のチカラ、芸能のカタチ

インドネシア, マレーシア, タイ, 日本, その他

「伝統のチカラ、芸能のカタチ」は、東南アジアと日本におけるキーパーソンたちとともに、伝統芸能の宝庫と言われるアジア各地で、伝統芸能を取り巻く社会状況を調査し、情報を発信・共有することで、伝統のチカラを再発見し、現代の社会に適した芸能のカタチを考えるための事業です。
現代を生きる私たちが伝統芸能の中に再び存在意義を見出し、そこに脈々と受継がれる価値を再発見することで、相互の文化を尊重・理解しあいながら、ともに豊かな人生を歩むための糧とすることを目指します。これにより、アジアセンターが掲げる相互交流の理念を、文化の深い礎の部分から体現しようと試みています。

伝統のチカラ、芸能のカタチ 公式ウェブサイト http://dento.jfac.jp

事業趣旨

グローバル化や技術革新が進む現代社会において、大量に流れ込む情報の氾濫は価値観の多様化や流動化を招き、地域固有の文化を衰退させつつある。それぞれの民族が独自に育んできた伝統芸能もまた、趣味趣向の細分化に伴って数多ある娯楽の一つとみなされ、あるいはそれが持つ厚みや重さゆえに、他と比べて敷居の高いものとして隅に追いやられていく。既存の価値体系の崩壊や地域コミュニティの解体もそれに一層の拍車をかけ、人々と伝統芸能の間に大きな隔たりを生み出している。数百年、あるいはそれ以上の長きに渡って時代に応じた変容を繰り返しながら、人々の心に寄り添うように存続してきた伝統芸能は、私たちにとってはもはや過去のものとなってしまったのだろうか?

ここに木ノ下裕一と言うひとがある。今日まで脈々と受け継がれる歌舞伎の正当な系譜とは別に、現代演劇という土俵で歌舞伎が持つ魅力を顕在化させ、作品づくりを通してその本質を人々に問う若き芸能の担い手である。自身の名前を冠した木ノ下歌舞伎は、一見すると歌舞伎とは思えぬ独特の様相を纏うが、その実、伝統芸能が持つ厚みや重さといったものを十分に咀嚼しながら、同時代性を兼ね備えた新たな芸能のカタチを提示することで、観客の心を捉えて離さない。既に10年の歳月を積み重ねた木ノ下歌舞伎の上演は、私たちを単に魅了するばかりではなく、その背後にある伝統のチカラを意識させ、否応なくその存在の大きさを気付かせてくれる。

伝統芸能を現代という文脈の中で捉えようとする試みそれ自体は新しいものではなく、ましてや日本の十八番という訳ではもちろんない。むしろ伝統芸能の宝庫と言われる東南アジアでは、異なる歴史や背景を持つ個々の民族が多種多様な文化を織り成し、いまもって伝統が根強く息づいているが故に、伝統芸能に対する取り組みも様々で、それこそ全くありのままの状態のものから、民族の枠組みを超えて国家的な規模で対応が講じられるものまで、その程度や温度差はまちまちである。そこでは、日本と同様あるいはそれ以上に、いまを生きる伝統芸能のあり方を模索し、作品を通して世に問う芸能の担い手も少なくないだろう。それらの人々と知見を共有し、共に歩むことで、それぞれの社会に適した芸能のカタチを考え、伝統のチカラを再発見する大きな手掛かりが得られるのではないだろうか。私たちが再び伝統芸能の中に存在意義を見出すとき、それは生きていく上での豊かさとなり、人生を歩む上での糧を与えてくれるものとなるだろう。

メンバープロフィール

木ノ下 裕一
木ノ下歌舞伎主宰。1985年7月4日、和歌山生まれ。小学校三年生(8歳)の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時に独学で落語を始め、その後、能、狂言、日本舞踊(京舞)、文楽、歌舞伎などの古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学ぶ。2006年に古典演目上演の演出や補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。
2014年4月より、公益財団法人セゾン文化財団ジュニア・フェロー。
2015年に再演した木ノ下歌舞伎『三人吉三』にて、優れた舞台人や演劇人を顕彰する読売演劇大賞2015年上半期作品賞にノミネートされる。
2016年3月に、近代における歌舞伎新演出に関する研究と木ノ下歌舞伎としての実践的な業績が評価され、京都造形芸術大学大学院にて博士号取得。
また、2016年に上演した『勧進帳』の成果に対して、平成28年度文化庁芸術祭新人賞を受賞。平成29年度芸術文化特別奨励制度奨励者。
その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。
園田 喬し
演劇ライター、編集者、演劇雑誌『BITE(バイト)』編集長。2000年代前半より演劇作品の制作現場へ参加するようになり、小劇場から商業演劇まで幅広い公演の劇場業務を経験。2005年より演劇専門誌『演劇ぶっく』の編集部員として数多くの劇作家、演出家、俳優、スタッフにインタビューを行い、国内現代演劇の最先端を取材する。この頃より年間150〜200本程度の演劇作品を鑑賞し、首都圏を中心に日本各地の劇場へ足を運ぶ生活が始まる。演劇ぶっく副編集長を経て、現在は自身が代表を務める演劇雑誌『BITE』を発行、マスメディアの取材対象になりにくい小劇場シーンを積極的に取り上げ、観劇環境の更なる整地を目指している。この他、演劇専門誌、公演パンフレット、公演情報ウェブサイト、フリーペーパー等での執筆、演劇コンテストや関連事業に携わるなど、その活動範囲は多岐に渡る。
時松 はるな
画家、イラストレーター。1984年千葉県生まれ。多摩美術大学卒業。在学中に初個展を開催。
人々の何気ない瞬間を切り取り、シャープペンシルや色鉛筆、水彩を用いて、どこか愉快な群衆を軽やかに描いた作品は好評を得、東京オペラシティアートギャラリーでの所蔵品展、KIAF韓国アートフェアなどに出品。さらに「GEISAI 10」では審査員特別賞(サミュエル・クン賞)を受賞するなど、大学在学中から注目を集める。以後、銀座ギャルリー東京ユマニテ、大阪福住画廊を拠点とし、定期的に個展を開催している。 近年は韓国やシンガポールのグループショウでの発表、演劇のフライヤーなども手掛けており、また、2014年からは国立能楽堂企画公演のチラシイラストや、パンフレット挿絵、グッズ等、能や狂言をテーマにしたイラストを展開するなど、活躍の場を広げている。
http://harunatokimatsu.com/
本郷 麻衣
1979年京都生まれ。京都造形芸術大学芸術学部洋画コース卒業。制作者。
在学中に演劇制作に触れ、以降様々な劇団やプロデュース公演の制作を行う。アトリエ劇研制作室のスタッフを経て、現在は(有)キューカンバーに所属しMONOや壁ノ花団等の制作を担当。
木ノ下歌舞伎には京都×横浜プロジェクト2010『勧進帳』より参加。
その他近年の主な活動として、dots、KYOTO EXPERIMENTフリンジ(2011・2012)など。
遠藤 雄
信州大学にてインド芸術とその派生文化について学ぶ。卒業後は海外の音楽家の招聘および公演制作会社に勤務。2003年にはインドネシア政府奨学生としてインドネシア芸術大学スラカルタ校へ留学。2004年から2011年までジョグジャカルタに滞在し、インドネシア国立ガジャマダ大学大学院に在籍しながら、ジャワの伝統芸能であるワヤン・クリットの研究に従事。都市化する社会の中で変容する伝統芸能の機能や役割をテーマに考察を深める。帰国後は大学講師などを経て、国際交流基金に勤務。
前田 佳子
東京外国語大学所属中に、フランス語専攻にも関わらず、インドネシア国立ガジャマダ大学へ留学。インドネシアのバリ島の伝統舞踊が初めて経験したフランスでの海外公演などの歴史的契機を追い、バリ島内外でどのような影響の授受があったかについて研究、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻修士課程修了。2007年より国際交流基金に勤務。