ASIA center | JAPAN FOUNDATION

国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
心と心がふれあう文化交流事業を行い、アジアの豊かな未来を創造します。

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「文化交流には、理屈を超えた感動がある」 人と人が出会い、文化や知識を共有し、協働して共に創造する未来を目指して

Report / 第1回事業諮問委員会
議論中の様子の写真1

国際交流基金アジアセンター 2014年の取り組み

国際交流基金アジアセンターの資料によると、四つの「C」(コミュニケートCommunicate/コネクト・アンド・シェアConnect & share/コラボレートCollaborate/クリエートCreate)が活動の指針とされ、具体的には‟日本語パートナーズ”事業と、芸術や文化における交流が活動の大きな柱となっています。アジアセンター発足に伴い始まった、さまざまな分野における取り組みについて報告されました。

国際交流基金アジアセンターについて

上記で説明した国際交流基金アジアセンターのコンセプトを表した図

「本物の日本人が来て、話をすることに意味がある」‟日本語パートナーズ”事業

‟日本語パートナーズ”事業とは、2020年までに3000人以上の日本人を、アジアの日本語教育の現場にアシスタントとして派遣するもの。現地の日本語教師のサポートをすると共に、生徒たちや現地の人々との交流によって、日本をより身近に感じてもらう取り組みです。

日本語パートナーズによる活動報告プレゼンテーションの様子の写真

諮問委員会では、タイでの活動を終え帰国したばかりの‟日本語パートナーズ”による、活動報告プレゼンテーションが行われました。派遣された場所、学校の規模や日本語学習者の人数、実際にどのような活動を行ってどのような成果につながったのか、この派遣事業に参加して感じたことについてなどの報告が行われました。報告された成果として、‟日本語パートナーズ”の活動によって、日本語の授業数の増加や、日本語クラスの拡大が挙げられました。

諮問委員からは、「報告を聞いて、計画が理想的に進行していると感じた」、「クラス数や日本語クラスの編成を増やせるなど具体的な成果を出したことは実にすばらしい」など順調な運営を評価する声が聞かれ、特に外国人委員の方々からは「これほどの活動が行われていたということはうれしい驚き」、「感動した」と称賛の声が寄せられました。

日本語パートナーズ派遣先の集合写真1

‟日本語パートナーズ”はなぜ中学・高校に派遣されるのか

現在、日本語は世界各地で学ばれています。特に東南アジアでは、日本語学習者の多くが中等教育の授業科目として学んでいるというデータがあるそうです。これは、教育機関のカリキュラムによって中等教育において第二外国語として日本語が選択できるようになっていることが大きな要因となっており、これが日本語学習の貴重な機会となっているためです。諮問委員からは、東南アジアのこのような日本語教育事情を踏まえ、「‟日本語パートナーズ”が、若者に焦点をあてて活動しているのは適切な判断である」との評価がなされました。

また外国人諮問委員からは、「わが国には、よりよい収入を得るために日本語を学びたいと思っている人たちがいるが、その全員が学べている訳ではない。‟日本語パートナーズ”を都市部だけでなく、農村部にも展開していただきたい」という切実な声も上がりました。

そのほかには、「もっとソーシャルメディアの力を活用する必要がある」という意見もありました。これは、「ソーシャルメディアは世界につながっている。‟日本語パートナーズ”の活動の様子、授業のサポートの様子を動画などでアップすることによって、日本語の授業を受けることができない子どもたちも日本のことを知り、学ぶことができる」という提言で、子どもの学習機会を増やす点や、若者にリーチしやすいメディアを活用する点、また「‟日本語パートナーズ”と現地の学校の子どもたちが、コンテンツ作りを通して協働できる」という点から、出席者の注目を集めました。

日本語パートナーズ派遣先の集合写真2

‟日本語パートナーズ”は今後どうあるべきか

諮問委員からは総じて、「‟日本語パートナーズ”事業は、今後も継続・拡大し、根付くようにしてほしい」という意見が示されたのがとても印象的です。諮問委員の方々にとって、“日本語パートナーズ”事業が想像以上に意義のある活動に映ったように思えます。“日本語パートナーズ”の派遣期間が現在、半年から1年未満とされていることから、「もう少し長い期間、現地で活動すると交流がより深まると思う」と活動期間の長期化を望む意見もありました。

具体的な国名を挙げて派遣を希望する声、「首都圏だけでなく地方や少数民族居住地域にももっと派遣してほしい」という声が、特にASEAN諸国の委員から多く聞かれ、“日本語パートナーズ”事業に対する期待感の大きさが感じられました。日本側からは「今後はビジネスリーダーやオピニオンリーダーが関与して、さまざまな世代間でも交流が広がるといい」と、ターゲットを若者層以外にも拡大するべきとの意見や、「一歩ひいて、その国がよりよくなるよう協力する姿勢が日本らしいのではないだろうか」、「日本がアジアから何を学ぶかということも重要」と双方向性を重視する発言もありました。

「文化、歴史を超えて絆を深めるために」映画祭やオリンピックで双方向の交流を

国際交流基金アジアセンターでは、文化事業の一環として、ストリートダンスからスポーツまで幅広い事業が行われています。しかし、文化的・宗教的にも多様な、東南アジアの国々での文化交流となると難しい部分もあります。そのため、文化的・宗教的な違いを超えやすい芸術や映画の分野に期待が寄せられました。さらに、お互いの文化を知り、協働し、創造していくためには、活動が継続的に行われていくことが重要であるということが議論の中から見えてきました。

国際交流基金アジアセンターの文化事業ロゴマーク

【平成27年度 主な文化事業】

議論はまず、映画分野における国際交流基金アジアセンターの交流事業について行われました。諮問委員に高評価だったのは、クロスカットアジアです。これは東京国際映画祭において2020年まで行われる取り組みで、毎年アジアの一国にフォーカスし、その国の今を伝える映画を紹介するというプログラムです。この映画関連事業では、映画を紹介するだけでなく「アーカイブして出版していくなどの展開も検討してもいいのでは」という提案もなされました。

そのほか、「映画を一緒に作ることは、双方で相手国の知識を増やすことになり、相互理解につながる」と、国際交流基金アジアセンターに旗振り役や支援を期待する声や、「日本と東南アジアの制作関係者が一緒になって、ASEAN諸国で活動できる可能性があればいい」と活動のさらなる協働を望む意見が出されました。

諮問委員の意見には、「文化、歴史を超えて絆を深めることは、お互いにとってプラスとなる」、「自国だけでなくアジアへ活動を広げることは、視野を広げるという相乗効果につながる」ということが共通しており、文化交流に対する期待と共感が寄せられました。

文化事業の助成とマーケットの共存

国際交流基金アジアセンターは文化活動の支援を使命としているため、民間の商業活動との関わりは重要なポイントであるとのこと。諮問委員からは、「マーケットに任せても拡大していく文化交流については、マーケットに任せることで文化がより発展する」などの役割分担の重要性を指摘する声や、「マーケットは利益が出ないと動かない。最初のテコ入れとして国際交流基金アジアセンターの助成は重要」と、起爆剤的な役割を期待する声が聞かれました。

今後は、ASEANの枠を超えた活動を進めていく

諮問委員によるさまざまな議論を受け、国際交流基金アジアセンターは、これらの文化事業を今後も継続していくことや活動の拡大に注力していくことを、この諮問委員会で表明しました。さらに日本×ASEAN諸国だけでなく、タイ×ミャンマー、インドネシア×マレーシアなどASEAN諸国の中での交流を促進することや、アジアの枠を超え、日本×アジア×米国、日本×アジア×ヨーロッパなど、トライアングルで活動する計画があることなど、今後の活動予定についても報告されています。

文化事業のイメージ写真1
文化事業のイメージ写真2

「ASEAN諸国と日本をつなごう」 東京オリンピック・パラリンピックでも日本とASEANは協働できる

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにおける活動にも期待が寄せられ、「日本としてだけでなく、ASEANとして発信もしてほしい」と、ASEANの絆をアピールしてほしいという声が多く聞かれました。

議論に挙がったのは、「オリンピック・パラリンピックには、開催国の特徴が表れる」ということです。諮問委員からは、「ASEAN諸国が共同して聖火リレー。例えば、各国で文化セレモニーなどを行って、聖火リレーでつないでいき、協働している様子を発信してはどうか」などの提案が出されました。また、「ぜひパラリンピックを応援してほしい」、「日本だけのショーにしないで」という新しい視点も示されました。最後は、「言葉を超えて、交流を身近なものにしていくことが、東京オリンピック・パラリンピックに向けても大切」というまとめの言葉が印象的でした。

国際交流基金アジアセンターに課せられた大きな役割

諮問委員会は、‟日本語パートナーズ”の活動報告プレゼンテーションから始まり、事業の検討と評価を行い、今後の交流のあり方を議論して終了しました。

印象に残ったのはある委員の方の、「文化交流には理屈ではない感動がある」という言葉です。異なる文化、背景を持つ人々がつながり、理解を深めていくこと。そのために、一緒に考え、行動し、創造していくことは非常に有効なことであり、またその様子は多くの人々の共感を得られるものだと感じました。

国際交流基金アジアセンターの活動は始まったばかりです。人と人がつながり、ネットワークを広げ、一緒に文化を創造することは簡単ではありません。それでもアジアの一員として、ASEAN諸国と日本とが今よりもっと近い関係になるのはそう遠い未来ではないことを感じた、とても意義のある会合でした。

 

 大塚聡美: バリュードライブ株式会社専属ライター兼エディター 文化交流、音楽、教育、マーケティングを中心に現地取材による執筆を得意とする。国際交流基金アジアセンターの文化交流イベントにも潜入しアジア文化の面白さ、奥深さをあらためて感じている。
コンテンツマーケティング研究所 副編集長 http://cm-labo.com/