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国際交流基金アジアセンターは、アジアの人々の間に共感や
共生の心を育むため、様々な分野で文化交流事業を実施しています。

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越境する映画制作の舞台裏 ――『アジア三面鏡』3監督シンポジウム

Interview/Asia Hundreds

過酷な冬の北海道での撮影を経て

石坂健治(以下、石坂):アジア・オムニバス映画製作シリーズ『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』は、日本を含むアジアの監督3名が、オムニバス映画を共同制作するという、国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭のプロジェクトです。

アジアに生きる人々を3人のアジアの監督がそれぞれの視点から描くということで、国ごとの社会や文化を反射する三面鏡に映し出して、アジアに生きる隣人としてお互いを共感するきっかけになることを目指して進めています。各エピソードの撮影は、アジアのどこかで撮影を行うことを条件に、それ以外はそれぞれの制作者に任せています。完成作品は東京国際映画祭をお披露目の場として、その後は世界各地の映画祭をはじめ、上映していく計画をしています。

第1弾である今回のテーマは「アジアで共に生きる Living Together in Asia」です。監督は日本とカンボジア、フィリピン、そして撮影場所にマレーシアも加わって、各国を行き来する人々の姿を映し出しています。

今日は撮影の裏話をお聞きしたいと思います。各話のメイキング映像と言いますか、撮影風景を3分ほどにまとめた映像をまずご覧いただいてから、お話を伺っていきたいと思います。
メイキングは面白いドキュメンタリーでもあります。第1話から伺います。第1話『SHINIUMA Dead Horse』を監督されました、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、これは2月の終わりから3月にかけて、北海道とマニラで撮影し、帯広市にあるばんえい競馬という競馬場と提携されましたが、冬の北海道での撮影は本当大変だったんではないでしょうか。

ブリランテ・メンドーサ(以下、メンドーサ):実際の撮影は大変過酷でした。ご存じのように、フィリピンでは雪はありません。フィリピンには雨季と乾季、2つの季節しかないんです。常に温かいフィリピンから来て、冬の北海道の撮影は大きなチャレンジでしたが、とても楽しんで撮影させていただきました。私たちフィリピン人は雪なんて見ることはできませんから、楽しもうと思いまして、雪の中で遊んだりもしました。また、帰りの飛行機が大雪で欠航になってしまったので、もう半日北海道に残ることになり、その日も撮影しました。脚本にはないシーンですが、たまたま大雪に見舞われて、とても美しいシーンが撮れました。

石坂:記録的な吹雪で足止めを食ったのを利用して、すごくリアルな雪の中のシーンが撮れたということですね。

映画『SHINIUMA Dead Horse』
『SHINIUMA Dead Horse』より

行定勲(以下、行定):日本人でもこんなすごい雪撮れないよね。

メンドーサ:こんな猛吹雪は、なかなか映像の中に捉えることは難しいと思います。結果的にとても美しいシーンが撮ることができて、とてもラッキーだったと思います。私のスタッフは雪合戦などもして楽しんでいました。

石坂:この辺はフィリピンの撮影ですね。

メンドーサ:これはフィリピンで近距離の移動によく使われる三輪自動車で、いつもこういう風に撮影してます。ご覧いただければ分かるように、カメラマンがハーネスとか付けずに、ただ乗っかって撮影しています。私はよくこういった形で撮影してしまうんですけど、自分の撮影現場は、とにかくみんなが楽しんで撮影することをひとつのモットーとしています。ですから、みんなが楽しんで撮影できることを心掛けています。

映画『SHINIUMA Dead Horse』撮影風景
『SHINIUMA Dead Horse』の撮影風景

石坂:ところで、メンドーサ監督はスタッフや関係者もキャストとして作品に出しますね。

メンドーサ:往々にして私の作品は少人数のスタッフで撮影しているので、1人にいろいろな役割を果たしてもらうようにしています。例えば、脚本家がカメラをいじったり、編集者に撮影してもらったり、私自身監督ですが、カメラを回したり、または小道具係になったりします。同じように俳優にもいろいろやってもらいます。私にとって、プロの俳優とアマチュアの演出に、それほど変わりはありません。なぜかと言うと、私は常に演出をとてもシンプルな説明にとどめて、複雑なことは言いません。演じている方が悩まなくて済むように、考えなくとも、誇張した演技をしなくて済むように、シンプルイズベストだと僕は考えています。

『アジア三面鏡』3監督シンポジウム ブリランテ・メンドーサ監督
自身の撮影スタイルについて話す、メンドーサ監督
『アジア三面鏡』3監督シンポジウムの様子

石坂:少人数のスタッフで、感度の良い小さなカメラを使って……。帯広での撮影はインディーズの撮り方の鑑のような気もします。

メンドーサ:私は、常にそこにあるもの、またはそこにいる人を、最大限に活用します。(撮影現場の写真を示しながら)たとえば、これは撮影用の照明ではないのです。たまたま、道にとても明るい街灯があって、その光がきれいに入り込む場所にカメラを設置して撮影しました。太陽光が使えるなら、それが一番自然かつ美しく、人々を照らすような場所に俳優を立たせて撮影するわけです。基本的にはそこにある自然な光源を使って撮影します。

石坂:フィリピンに戻られてからの撮影でも雪を降らせたそうですね。

メンドーサ:さきほど上映したメイキング映像に出てきた、上から発泡スチロールの粉を出していたシーンがそれです。

行定:フィリピンで、雪降らすのは大変だったでしょう?

メンドーサ:フィリピンには雪がありませんから、決して楽なことではありませんでした。細かい発泡スチロールの粒を上から降らせました。役者のルー・ヴェローソが、とにかく口や鼻に入ってくるのが嫌だと文句を言い始めました。発泡スチロールの粉ですから、とても軽くて、すんなり落ちずに舞ってしまうんですね。俳優だけではなくて、スタッフ全員の鼻や口に入ってきましたから、「文句を言うな、君だけじゃないぞ」と僕は諭したんですけど(笑)。

映画『SHINIUMA Dead Horse』降雪シーン撮影
熱帯のフィリピンで降雪シーンを撮影

石坂:行定さん、日本映画には、雪の降らせ方にいろいろノウハウがあるわけですよね。

行定:あるんですけど、雪は思いどおりに降らないんですよ。風があったりするでしょう? 日本でもきれいな美しい深々と降る雪を降らすことは、すごく難しい。でも、ダンテさん(メンドーサ監督の愛称)の映画の雪は、すごい美しかったですよね。大したもんだなと。フィリピンで雪を降らした人って、歴史上いないんじゃないかな。

メンドーサ:どうでしょうか(笑)。おそらくいないと思います。

行定:ちなみに一番きれいな雪はCGで作ります。でも、ダンテさんならCGは要らないですね。僕もスタッフだったら、CGじゃなく降らそうって言います。