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進化し続けるストリートカルチャーのいま AFRA×CHITO対談

Interview / DANCE DANCE ASIA

結局、最後はパッションが勝つんですよね。自分が「やりたい!」っていう。(AFRA)

―お話を伺っていると、CHITOさんはダンス作品や、お店やイベントなど、全体をディレクションする表現が得意な方だと思うんですが、一方で、ストリートダンスやヒップホップって、「勝負の世界」のイメージもありますよね。ラッパーもそうですが、ステージに出て行って、自分のスキルを出すみたいな。

AFRA:ヒップホップはまさにそこですよね。基本は「バトル精神」。ヒップホップが生まれたニューヨークがそういう環境だったから。人よりとにかく目立ちたい、成り上がりたい、っていう。

インタビュー中のAFRAさんの写真

 

 ―ヒップホップというルーツは同じでも、かたやストリートダンス、かたやヒューマンビートボックスという表現を選ばれたわけですが、それはなぜだったんでしょうか?

AFRA:僕はやっぱり『ダンス甲子園』のような、ストリートダンサーを紹介したテレビ番組の衝撃が大きかったですね。それでヒップホップを聴くようになって、その後The Rootsというグループのライブで、ヒューマンビートボックスを生で観て衝撃を受けたんです。「これならターンテーブルすらも買う必要がない!」って。高校生の頃ですね。

―でもヒューマンビートボックスは、ヒップホップの世界では少数派というか、珍しい表現ではありますよね。

CHITO:僕も聞きたい。なぜビートボックスを選んだのか。

AFRA:なんででしょう……? 僕は関西出身ということもあって、昔からお笑い芸人が好きなんですが、芸人さんを見ているとラッパーに見えてくるんですよね(笑)。大きな舞台にマイクスタンドがポツンとあって、その前に立った芸人が「しゃべくり」ひとつで成り上がっていく。それって、ラップやビートボックスにも通じると思うんですよ。ダンサーもそうですよね、身体1つで表現しているっていう意味では。

CHITO:そうですね。己の身体だけで何ができるか? 何を訴えられるか? っていう。それこそ僕らはストリートダンサーなので、舞台がガムテープの跡でベタベタだろうが、雨でツルツルだろうが関係なく踊る。ものすごく狭い空間でも「そこで何ができるか?」を考えて、踊りきってしまう先輩たちを見たとき、「ああ、やっぱりストリートダンサーってかっこいいな」って思いましたね。

インタビュー中のCHITOさんの写真

 

―CHITOさんがストリートダンサーの道を選ばれたのはなぜだったんですか?

CHITO:僕もやっぱり『ダンス甲子園』や『DADA L.M.D』といったテレビ番組がきっかけでしたね。自分で言うのも何なんですが……、子どもの頃から文章を書くのも絵を描くのもスピーチも得意な、いわゆる優等生だったんですけど、とにかく運動だけはダメで。

AFRA:え、そうなんですか?

CHITO:運動神経めちゃくちゃ悪かったんですよ(笑)。でも、テレビでダンサーたちが踊っているのを見て、「うわあ、かっこいい!」って衝撃が走ったんです。まあ、思春期特有の、自分にないものに憧れる感じですよね。それでやり始めたらハマってしまった。

―運動神経がなかったのに、最初から踊れたんですか?

CHITO:たぶんダンスと運動神経ってあまり関係ないんですよね。ダンサーでスポーツ苦手な人ってけっこういますから。使う筋肉というか、感覚も違っていて、リズム感だったり、クリエイティビティーだったり。もちろん、アスリート的な身体能力も必要になってくるし、そこは補わざるを得ないんですが、ちょうど自分に合ったフィジカルトレーニングだったと思います。バスケもサッカーもダメだったけど、ダンスだったから自分の身体を向上していけたんです。

AFRA:結局、最後はパッションが勝つんですよね。自分が「やりたい!」っていう。

CHITO:当時は情報も少なかったから、サーフショップの店頭で流れているミュージックビデオのワンシーンで映るダンサーの動きを真似したり、怖そうなダンサーの先輩のところに行って、「1週間、ランチをおごるから教えてくれ」って頼んで教えてもらいました。カツカレーの食券を1週間分渡してね(笑)。

インタビュー中のAFRAさん、CHITOさんの写真

僕にとって、ヒップホップは生き方の指針です。いまだに興奮できるアートだと思いますね。(CHITO)

―ストリートダンスとは切っても切れない関係である、「ヒップホップ」の魅力とは何だと思いますか?

AFRA:いわゆる音楽やダンスのスタイル、カテゴリーの話だけじゃないですよね。ヒップホップといっても、その中にダンスがあって、DJカルチャーがあって、ラップやヒューマンビートボックス、グラフィティーもある。ヒップホップは1970年代のゲットーから出てきた「声」だと思うんです。お金も何もない子どもたちが、それでも何かを楽しむためにDIYで作りあげたアートフォーム。ストリートから生まれた「都会の民族音楽」だとも僕は思っています。だからいまもずっと続いていて、いろんなジャンルにどんどん影響を与えていくだけのパワーがあるんだと思う。

CHITO:僕にとって、ヒップホップは生き方の指針です。僕の描いている絵は一見ファンタジックに見えますが、マインドはヒップホップで描いているんです。元々はバトルの文化でしたが、その先にあるものとして、「オリジナルなものを作ろう」「誰もやってないことをやろう」「自分のスタイルでレベゼンしよう」っていうことがヒップホップだったりするわけだから。いまだに興奮できるアートだと思いますね。