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シティ・カマルディン――映画『ドラゴン・ガール』にみるブルネイの今

Presentation / Asia Hundreds

主役の2人は地元の新人

松下:私はこの映画を日本でリメイクしたら顧問の先生役は竹中直人さんかな、なんて思って観ていました。この映画には、脚本家がインドネシアの方だったり、マレーシアやインドネシアの人気俳優がかなり出演していますが、ヤスミン役、ナディア役の主演の2人は、ブルネイの地元からの全くの新人だったのですね。

トークイベント中の松下氏の写真

カマルディン:その通りです。2人はテレビドラマやCMに出演したこともなく、映画も全くの初めてでした。ブルネイでの映画制作は全てゼロからのスタートと言っても過言ではありません。映画学校もなければ演劇学校も演技指導者もおらず、経験がない私が彼らを指導するほかありませんでした。ただ、幸いなことに、また非常に重要なことでもありますが、二人とも天性の才能があり感情表現に富んでいたため、私のほうではキャラクターの造形をしっかりと固めることに専念するだけでした。トレーニング中は毎日一緒に過ごし、それ以外の日中と夜の数時間はシラットの特訓の時間にあてられました。もちろん、彼女たちにはシラットの経験もありませんでした。約1年かけて特訓した成果は作品に現れています。

ブルネイの高校生のライフスタイル

質問者D:ブルネイの高校生のライフスタイルが分からないので教えていただきたいです。劇中に出てきたコーランの課外授業を家で家庭教師が教えるというスタイルは通常よくあることでしょうか? また頭髪を隠すベールをかぶってるときと、脱いでるときとあったと思います。監督はすごくすてきな髪型ですが、ブルネイの女の子たちもベールを取って髪を染めたり、おしゃれしたりする自由があるんでしょうか?

トークイベントで語るカマルディン監督の写真

カマルディン:良い質問ですね。ブルネイのことはまだまだ理解されていないところがあるので興味深いです。

家庭教師はよくあることです。私も幼い時に家庭教師がいました。2番目にこの「トゥドゥン」とブルネイでは呼ばれるベールですが、これは着ける着けないは日常では自由ですが、公立の学校に通う場合制服の一部になります。無宗教あるいはキリスト教徒の学生であってイスラム教徒でなくても、ブルネイの公立学校に通っている限りは髪の毛を隠すというのは必須になります。ただ放課後、学校が終わったら、別に取っても何か着けても全く構わないです。私も公立の小学校に通っていたので、トゥドゥンは着用していましたが、放課後は脱いでいました。髪型はどんな髪型でも構いません。

また、ブルネイでは、ラッシュの渋滞につかまって車内から他の車を見ると、女性、女性、皆女性ばかり自分で車を運転して仕事に向かっていている光景をよく目にするのですが、ブルネイは自立した女性であふれていて、私自身女性としてジェンダー・バイアスを経験したことがない、本当に素晴らしい国です。

松下:監督に伺ったところによると、ナディア役の彼女は私生活でもずっとトゥドゥンをかぶっていてそのままトレーニングもするということでした。対する劇中のヤスミンは私立高校でもかぶっておらず、日常でもかぶっていないという、そんないろんな人がいる状況が映画では反映されていましたね。

トークイベントの様子の写真