ASIA center | JAPAN FOUNDATION

国際交流基金アジアセンターは、アジアの人々の間に共感や
共生の心を育むため、様々な分野で文化交流事業を実施しています。

MENU

大友良英×能町みね子が語る「はみ出し音楽講座」アジア編

Interview/Asian Meeting Festival 2016

そもそも、インドネシアの若者が普段なにをしているかなんて、私たち全然知らないじゃないですか。(能町)

大友:昨年の『Asian Meeting Festival 2015』、能町さんの感想はぶっちゃけいかがでしたか?

能町:20人のミュージシャンが即興演奏を繰り広げたライブも楽しかったんですが、その前にインドネシアのノイズシーンを追ったドキュメンタリー映画『BISING ―ノイズミュージック・フロム・インドネシア』の上映がありましたよね。そもそも、インドネシアの若者が普段なにをしているかなんて、私たち全然知らないじゃないですか。

大友:そうですよね。

能町:日本でも「ノイズミュージック」はマイナーですが、私たちはインドネシアのメジャーな音楽も知らず、そのなかでノイズミュージックがどういう立ち位置なのかも全然わからないまま、ノイズシーンの映画を観ている。まるで未知の冒険ドキュメンタリーを観ているみたいで、スリリングな体験でした。

大友:まったく見知らぬ世界を、いきなりディープな視点から見る。まさに冒険ですよね。

能町:よくわからないノイジーな音楽を、みんなで集まって楽しそうにやっている。なぜか共感できるところもあって嬉しかったです。ライブは、ステージのない会場の形態も面白かったですね。お客さんが会場中に広がっていて、そのなかにミュージシャンがぽつぽつと散らばっている。空間のあらゆるところから音が鳴りはじめ、だんだん一体化して全体の音になっていく。秘められた祭のような雰囲気も感じました。

『Asian Meeting Festival 2015』公演風景 ©Kuniya Oyamada / ENSEMBLES ASIA

『Asian Meeting Festival 2015』公演風景 ©Kuniya Oyamada / ENSEMBLES ASIA

大友:出会ったばかりのミュージシャン十数人と共通の言語もないなかで、どうやったらうまくコラボレーションできるかみんなで悩みました。ただ、一人ひとりは自国で独自のスタイルを持ったミュージシャンばかりなので、それぞれがフラットな状態で音さえ出せば、面白いものができるんじゃないかと。それでああいったスタイルになったんです。

能町:一般の人たちが、それぞれ好きに持ち寄った楽器で音を奏でる『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』とも通じるものを感じました。一応大友さんが指揮を取っているけど、演奏は個人の勝手で、だんだんまとまりになって祝祭感みたいなものが生まれる。私も参加してみたいって思いました。

AさんとBさんがセッションして、お互いが普段やっていることをぶち壊しはじめると最高ですね。(能町)

―ノイズミュージックや実験的な音楽でよく行なわれる即興演奏において、今日は面白かった、いやイマイチだったみたいな基準って、どのあたりにあるんでしょうか?

能町:それは言葉にするのがすごく難しいですね。抽象的ですけど、カテゴライズが完全に不可能なものとか、まったく聴いたことがないものが聴けたらすごく嬉しい。

大友:そうですよね。いいか悪いかの判断すらできないくらい、これまでの評価軸では当てはまらないというか、どう判断したら……っていうものに出会うのは本当に楽しいです。

 

能町:AさんとBさんがセッションして、お互いが普段やっていることをぶち壊しはじめると最高ですね。以前、「たま」のパーカッションの石川浩司さんと灰野敬二さんによる即興ライブを観に行ったことがあるんですが、石川さんの演奏が珍妙で面白すぎて、あのクールな灰野さんが演奏中に吹き出しちゃったように見えたんですよ(笑)。その瞬間がもう最高で、お互いが壊すことで新しいものが生まれるというか。

大友:ノイズミュージックですら30年以上の歴史があるわけで、なんとなくの評価軸があるんだけど、『Asian Meeting Festival』に参加してくれたミュージシャンたちは、ノイズ的な人もいれば、独特の音階でギターの弾き語りをする人もいるし、ガムランみたいに伝統的な楽器を新たな方法で使う人もいたりして、いったいどの評価軸で聴けばいいのかわからない。その上、互いに共演したこともなければ、言葉もなかなか通じない。そんな人たちが共演しはじめるんですから尚更ですよね。評価軸がないものはやっぱり面白いです。

能町:『Asian Meeting Festival 2015』のときにCINRA.NETに掲載された大友さんのインタビューで、ガムランを弾きながら、カラオケマシンで歌にエコーをかけていたバリ島のおじさんの話がありましたけど、ああいうのすごく気になります。純粋にかっこいいと思ってやっているわけですよね。

大友:「これが伝統なんだよねー」って言いながら、エフェクターいじってる(笑)。そういう伝統と現代の境目がない感じもインドネシアは面白いですね。バリ島のウブドっていう町で、ずっと昔から続く伝統的な新年のお祭りをリサーチしたんですけど、巨大な山車みたいのが出てきて、それがギンギンにレーザービームを出しまくっているんです(笑)。

能町:デコトラみたい(笑)。

大友:まさに。祭りに参加するのは、昔から10代の未婚の男女が中心で、ただ昔と違うのはみんな写メを撮りまくってる。祭りのあいだずっとカシャカシャいってて、LEDとレーザーがギラギラーン! ですからね。伝統的な衣装を着ているけど、足元はナイキだったりする。でもこれが本当に生きているお祭りなんだなって思いました。昔の通りにやろう、じゃなくて、「今年はなにやろうか?」って考えている。一番面白いものを昔からやり続けてたらこうなった。これでいいんじゃないのかって思えたんです。日本だと「伝統を壊すな」とか怒られちゃいそうだけど。

能町:最近の日本の盆踊りもいいですよ。去年私が行った盆踊りで一番盛り上がったのが、荻野目洋子の“ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)”(1985年)でしたから(笑)。

大友:盆踊りはテンポさえ合えばどんな曲でも踊れるからね。伝統という評価軸のなかで保存されるべきものもあるけど、変わっていくものがあってもいい。

能町:ほんとにそうですね。

大友:ゲタチュウ・メクリヤっていう、エチオピアジャズの大御所がいるんですけど、エチオピアのメロディーって日本の演歌にそっくりなんですよ。こぶしまでちゃんと効いている(笑)。最近、ヨーロッパのパンクバンドとコラボレーションしていて、それがまた得体のしれない音楽になっているんですけど、こういったコラボをいつか日本でも起こせたらいいなと思っています。