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国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
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Sanriku-Asian Network Project(サンプロ):高校芸能部インドネシア派遣事業レポート

Sanriku-Asian Network Project(サンプロ)では、年間を通してアジアと三陸地方を芸能で繋ぐ交流事業を実施しています。その一環として、宮城県、岩手県にある3つの高校の芸能部に所属する高校生およびOB、7名をインドネシア、バリ島に一週間派遣しました。派遣団一行は、バリに根付く伝統芸能が人々の暮らしと密接につながりあう様子を学び、訪問先では、バリの踊り手、大学生、高校生らに東北に伝わる鹿踊(ししおどり)を披露し意見を交わしました。今後、東北の新たな芸能の担い手として成長、活躍してゆくことが期待されます。
6月2日(土曜日)には、岩手県北上市にて派遣事業報告会(Sanriku-Asian Network Project報告会「高校生鹿踊部バリ島で舞う」)を行います。

活動の写真1
活動の写真2

参加者

小野寺翔:派遣団リーダー、行山流水戸辺鹿子躍保存会

小野寺翔さんの写真

佐々木一磨:派遣団副リーダー、行山流水戸辺鹿子躍保存会

佐々木一磨さんの写真

山田柚希:岩手県立大東高等学校 行山流鹿踊部

山田柚希さんの写真

加藤奏:岩手県立大東高等学校 行山流鹿踊部

加藤奏さんの写真

鈴木凪紗:岩手県立大東高等学校 行山流鹿踊部

鈴木凪紗さんの写真

渡辺きあな:岩手県立岩谷堂高等学校 鹿踊部

渡辺きあなさんの写真

高橋花:岩手県立岩谷堂高等学校 鹿踊部

高橋花さんの写真

日程

2018年3月23日(金曜日):国内移動
2018年3月24日(土曜日):成田空港からデンパサール空港へ
2018年3月25日(日曜日):オリエンテーション、バリ芸能鑑賞
2018年3月26日(月曜日):バロン・ダンス鑑賞、マスク・ミュージアム視察
2018年3月27日(火曜日):インドネシア国立芸術大学デンパサール校訪問、仮面舞踊(トペン)を習うワークショップ
2018年3月28日(水曜日):帰国後報告会についてミーティング、ケチャ公演鑑賞
2018年3月29日(木曜日):国立ウブド第一高等学校訪問、デンパサール空港から成田空港へ
2018年3月30日(金曜日):国内移動

活動の写真3
活動の写真4

参加者の感想

小野寺翔
現地の大学や高校での披露の際には、必ず後半に鹿子躍装束の着付けと太鼓をたたく体験の時間をとった。そこで興味深かったのが、口唱歌「タンタンタコモコタンタン」が一瞬で通じたことだった。言葉が通じなくとも、口唱歌と太鼓の音で、その通りに叩くことができていた。音が合った時には、みんなが笑顔になった。あの場で個人的に感じたのは、まさに異文化の交流を体感する瞬間は、とても平和で幸せな時間になっていたという点である。そんな瞬間を創れる、郷土芸能の力を実感したとともに、日本に帰ってからは、地元でこの「郷土芸能を通じた交流」を実践に活かせないかと考えている。特にこれから先の沿岸の復興に、故郷発展のキーとして、郷土芸能を活かしていくことを考えたい。

佐々木一磨
私は正直、バリでプログラムを終える前まで、鹿子躍という伝統芸能を継承している者としての自覚が持てず、踊りに対して意識を高く持つことができなかった。しかし、バリの伝統芸能に触れ、彼らの伝統文化に対する姿勢を肌で感じていくうちに、自分の中の意識が変わっていくのを感じた。私が住んでいる町は現在、震災の影響での人口流失、少子高齢化といった問題に直面している。そのため、鹿子躍の踊り手不足といった問題が起きている。漠然とはしているが、私はこれらの問題を抱えた地域のため、また、鹿子躍のために、何かしらの手助けになれることをしたいと考えるようになった。これは以前にはなかった感情だ。

活動の写真5
活動の写真6

山田柚希
バリにいて私が一番思ったことは、バリのみんなは本当に芸能が好きなんだということだ。日本は伝統芸能に触れる機会が少ないため、興味を持とうとする人は少ないけど、バリでは幼いころから芸能に親しんでいるためか、私たちの踊りに興味を示してくれた。そのことが何よりも嬉しかった。日本人は自ら美術館に行ったり、伝統芸能を見に行ったりする人は多くないと思うけど、形に残るものが全てではないということ、もう一度見たい、印象に残った!など芸能・芸術への親しみを身近に感じてほしいと思った。

加藤奏
バロン・ダンスの観賞では、物語の途中に出てくる猿が印象的でした。仕草や動作が細かく本物そっくりに演じられていました。毎日ひたすら同じ踊りをするわけではなく、昨日より上手くやろうと自分たちで日々工夫しているとデドさんへの質問を通して理解しました。アドリブを入れてみるなどして、どうしたらもっと本物の動物に見えるかと自分なりに追求していました。踊りの動作や仕草が固定されていなくて自由さがあり、とてもいいなと思いました。私たちが踊ってきた鹿踊は単に迫力のある踊りを目指して練習してきましたが、その物になりきって踊る物語性を自分たちで理解していなかったという足りないところが見えてきたように思います。

鈴木凪紗
バリでの交流は、質問がたくさんあったり、積極的に太鼓などを体験してくれたりしたので、鹿踊に興味を持ってくれていることが伝わってきました。しかし、私はそのような質問に答えられなかったので、もっと鹿踊について学ばなければいけないと反省しました。太鼓を教えるのは言葉が通じなければ難しいと思っていたけれど、唱歌だけでも伝わり感動しました。このような他の国の人との交流は鹿踊を世界に広める貴重な機会だと改めて感じることができました。

活動の写真7
活動の写真8

渡辺きあな
今回のインドネシア派遣事業を通して、私は変わったことがあります。一つ目は、英語に対する姿勢の変化です。今までの英語は学ぶだけのものでした。授業で学んでテストや試験というものだけのためにただ習わされているような気さえしていました。普段は授業でしか使うことのない英語を自分で文章から考えてやることで英語はただ学ぶだけのものではなく、もっと英語を使って会話したいと思うようになりました。共通の言葉を使ってお互いに理解しあえることはこんなに楽しいものなんだと実感することができました。これからも英語を使える場で積極的に使っていきたいです。
二つ目は、当たり前の生活なんてないということです。飲み物が冷えていること、施設がきれいなこと、水道水が飲めること、日本にいるとこんな生活が当たり前だと感じてしまいます。でも、バリの人々は、これが当たり前だとは思っていませんでした。私たちが思っている当たり前は当たり前ではないということに気づきました。だから、今普通にできていることが有難いことなんだと感じられるようになりました。

高橋花
今までの私は、鹿踊をみんなで楽しく部活でやっているだけでした。でも、今回の派遣事業でいろいろ変わりました。大東高校と水戸辺鹿子躍の踊りを見て、すごくかっこいいと思いました。迫力もあって、何回見ても飽きない踊りだと思いました。私も見ている人からまた見たいと思ってもらえるような踊りをしたいと思いました。そして、前よりも踊ることが好きになったし、もっと頑張ろうと思うようになりました。思い通りにできなかったり、踊りたくないと思うこともありますが、今は、踊っていてすごく楽しいし、あんな風に踊れるようになりたいと目標ができました。
今回の派遣事業で、インドネシアの文化やしきたりについて知ることができ、日本の芸能や文化などについても少しは伝えることができたと思います。そして、何より本気で頑張りたいと思うことを見つけることができました。高校を卒業しても鹿踊を続けていきたいです。

活動の写真9