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出発前インタビュー

「地道に交流を深め 日本のファンを増やしていきたい」日本語パートナーズ第1期 派遣直前座談会②

フィリピン
上田 達夫さん
インドネシア
松田 将吾さん
タイ
橋本 美香さん
吹き出しの画像「海外でボランティア活動がやりたい」「人生の転機」「タイに住みたい」

―まず皆さんの派遣国とご職業をお聞かせください。

上田:定年退職をした身です。フィリピンへ派遣されます。

松田:3年勤めたメーカーを退職したばかりです。インドネシアへ行きます。

橋本:大学生です。タイに派遣されます。

―日本語パートナーズに応募しようと思った動機や経緯をお聞かせください。

上田:非営利組織の中で一度活動してみたいと思ったのが応募動機です。私は40年の社会人生活を、企業という営利組織の中で、営業として働いてきましたが、今度は非営利組織で何か社会へ貢献したいと思うようになったのです。退職後は日本語教師の養成講座を受けて、日本語教師のボランティアをしていたのですが、もっと本格的に海外でもやってみたいと思うようになったことも応募の理由です。

橋本:私は今、大学4年生、国際学部で学んでいます。今回の派遣先であるタイが本当に好きで、1年間に3回タイに行き、現地の大学生と交流するイベントに参加したりしました。とにかくタイに住みたいというのが、応募のきっかけです。将来的に外国に住むなら日本語教師は良い仕事だと思い、帰国後は大学院で日本語教育を学ぶ予定です。

松田:私の動機は、人生の方向転換をしようと思ったことです。大学では政治経済を学び、自動車関連のメーカーの人事部で評価や処遇に関する業務を3年間やってきました。もともと外国語も外国に行くのも好きなので、この派遣をきっかけに何かを感じて、次へつなげていきたいと思っています。

―松田さんは、日本語パートナーズになるために会社を辞められたというお話ですが、不安やご家族の反対はありませんでしたか?

松田:両親には「なぜ?」と言われましたね。仕事は楽しかったですし、恵まれていたとも思います。でもいろいろなことのタイミングを考えると、26歳の今なら人生の方向転換もできるだろうと考えました。インドネシアを選んだ理由は、派遣期間が9カ月間と、タイやフィリピンに比べちょっと長いところに魅力を感じました。インドネシアは文化も民族も多様な国です。私はずっと日本の中で育ってきたので、ドメスティックな人間で、考え方も視野もあまり広くはないことを自覚していました。だから、いろんな価値観を持つ人が集まって一つの国家を作っているインドネシアへ行って、視野を広げたいなと思ったのです。

現地での活動の基盤となる研修。キーワードは「協働」

―次は、研修担当の登里先生に伺います。今回の研修ではどんな授業を担当されていますか。

登里:今回の研修では、主に日本事情・日本文化紹介を担当しています。また国としてはインドネシアを担当しているので、今後はインドネシアに派遣された日本語パートナーズのフォローもさせていただく予定です。「日本事情・日本文化紹介」は3人で1つのグループを作り、「日本人や今の日本について、現地の高校生の興味をひき、またわかりやすく紹介する」ことを目的とするプロジェクトです。さまざまな世代や考えを持つ方がグループを作り、うまく協働できるか、実はちょっと心配でした。意見がまとまるまで、ちょっと苦労しているグループもありました。しかし、それは赴任後に派遣国で皆さんが出くわす困難の一つではないでしょうか。それをここで経験できたのは良かったと思います。日本語パートナーズ派遣事業では、日本人と現地の日本語教師、 また日本語パートナーズ同士のチームワークがとても大切なので、この派遣前研修で連帯感が得られたのは良かったと思います。

同じ目標の仲間と支え合い、刺激し合う

―4週間にわたる研修はいかがでしたか。

松田:一番ためになって、かつ楽しかったのはインドネシア語の授業ですね。月曜日から土曜日まで、毎日午前中3時間が語学の授業です。語学研修は少人数制で、メンバーは8人くらいです。世代もバラバラでしたが、みんなとても仲良くて、休日を利用して先生と一緒に難波のインドネシア料理店へ行ったりしました。

上田:皆さん真面目で、本当に一生懸命やっていらっしゃいます。「明日、プレゼンテーションの練習があります」と言われると夜遅くまで準備しているし、感心しました。同じシニア世代の方々が一生懸命にやっている姿に刺激を受けました。

橋本:真面目にやっていましたが、同時に楽しさも感じていましたね。特に、文化発表グループワークはみんなで何かを作っていく過程が楽しいと感じています。語学以外では、医療の授業、感染症についての講義もとてもためになりました。犬に咬(か)まれた時の対処の仕方や予防接種についての講義で、海外で自分の身を守るために必要なことを学びました。先生の話し方もあったのですが、感染症って本当に怖いですね。

上田:もっと怖い講義もあったんですよ(笑)。希望者のみの「ミドルエージからの健康管理」の講義では、シビアな話もありましたが、シニア世代には大切なことだと思いましたね。

橋本:研修中は留学生との交流もありました。今まで、こんなに幅広い世代の方と関わる機会がなかったので、とても刺激になっています。

―研修で大変だったことはありますか?

橋本:現地語研修は、すごく難しいですよね。タイ語は少し前からやっているのですが、みんなの頑張りがすごくて、見る見る追いついてくるので、私ももっと頑張らないといけないという自分との戦いでした。

上田:シニアとしては、記憶力が落ちているから大変です。書いて発音して、目で見て発音して、5分後にはもう忘れている。若いころのペースではいかないですね(笑)苦労しています。

橋本:松田さんは、いつも周りをフォローされていて、すごいなと思っています。語学に苦手意識のある方と一緒に勉強したり、覚えやすいように工夫をされているようでした。

松田:ありがとうございます。同じ教室の仲間とフォローしたり、されたりできる関係を、研修期間中に築けて良かったですね。

―研修期間中の週末はどのように過ごしていましたか?

橋本:このセンターは海が近いので、釣りに行ったりしました。釣りは初心者なのですが、一緒にタイへ行く仲間が優しく教えてくれて、「釣れました」「じゃ料理しましょう」って感じで、楽しく過ごせました。とても恵まれた環境だと思います。

松田:近くのラーメン屋に食べにいったり、浜へ趣味の写真撮影に行ったり、語学の仲間と遊びに行ったりしました。

上田:この研修期間中、週末は3回あったので、1回は京都へ親戚を訪ね、2回目は独身時代を過ごした神戸へセンチメンタルジャーニーに行きました。3回目は難波へ行きましたが、昔とすごく変わっていて迷子になりましたね。

「笑顔で交流して日本人のファンを増やしたい」と話す松田さんの写真

―現地でどのような活動をしたいと思いますか。

上田:まずは、パートナーズとして割り当てられた仕事を実行する。それ以外は、硬く考えないで、私自身を見せてこようと思います。「これが日本人だ。こういう考え方、行動をするんだよ」と。会社員時代には肩に力が入っていましたが、今は肩の力を抜いて、自分を見せてきたいと思います。

松田:私は、研修の中で心に残っていることがあります。学生さんたちとの接し方を学ぶ講義で、先生が「日本語パートナーズとして日本語を教えることはもちろん大切ですが、頑張りすぎたり張り切りすぎたりすると、現地の生徒さんたちのやる気は逆に下がっちゃうかもしれない。だから張り切りすぎずに、肩の力をいい意味で抜いてやってきてほしい」とおっしゃったんですね。だから、自分がすべきことは、笑顔で交流して日本人のファンを増やしていくことかなと思っています。派遣先が工業高校なので、自分もメーカーで働いていた経験もありますし、現地の日系企業とインドネシア人高校生との橋渡しができればと思っています。

橋本:まずは友達を作りたいです。日本語を教えたタイの友人が、実際に日本に来てくれました。私自身も、またタイに行きたいと思っています。地道なことですが、このようなつながりが築けたらいいなと思っています。

登里:松田さんの話されたことは、とても大切なことです。「正しい日本語」を教えることも大事ですが、「楽しい日本語」のほうがもっと大切です。例えば、生徒が「おはようごじゃいます」と挨拶してくれた時、「間違っています。『おはようございます』ですよ」と返したら、その子の話したい気持ちをそいでしまうかもしれませんね。時と場合によっては正しい発音を教えたほうがいいこともありますが、基本的には、生徒たちの一生懸命な気持ちをくんであげてほしい。「日本語を話そう」という気持ちを育んでいただきたいですね。

※掲載内容は、2014年8月時点のものです。

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