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国際交流基金アジアセンターは、アジアの人々の間に共感や
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オムニバスで生まれた有機的な関係――『アジア三面鏡2018:Journey』監督シンポジウム

Symposium / Asia Hundreds


ASIA HUNDREDS(アジア・ハンドレッズ)」は、国際交流基金アジアセンターの文化事業に参画するアーティストなどのプロフェッショナルを、インタビューや講演会を通して紹介するシリーズです。 文化・芸術のキーパーソンたちのことばを日英両言語で発信し、アジアの「いま」をアーカイブすることで、アジア域内における文化交流の更なる活性化を目指しています。

三監督の作品テーマの礎となった『海』(デグナー監督)

石坂:本作のテーマは「旅」ということで、これはデグナー監督が早くに脚本に書いていた中国国内で海へ向かう旅というストーリーが基となって、三監督の話し合いで決まったという経緯がありました。デグナー監督は前作『告別』で父と娘との葛藤、今作『海』では母と娘の関係を描いており、二作にはある種の続編の趣がありますが、これは二部作のように考えていいのでしょうか?

デグナー:実は、『告別』の脚本を執筆した同時期に、『海』の脚本をある程度書き上げていました。映画の企画として温めていたところ、井関(惺)*1 プロデューサーが中国にいらした時に、実はこういう題材があることをお伝えしました。ある意味、二作の話は続いているのですが、俳優は異なります。

*1 『アジア三面鏡2018:Journey』統括プロデューサー。大島渚監督『戦場のメリークリスマス』(83)、黒澤明監督『乱』(85)、柳町光男監督『チャイナシャドー』(89)を製作。ジェイムズ・アイヴォリー監督『ハワーズエンド』(92)、デイビッド・クローネンバーグ監督『裸のランチ』(91)のプロデュースのほか、『スモーク』『始皇帝暗殺』『世界最速のインディアン』『墨攻』など数多くの国際共同製作作品を手掛ける。

映画『アジア三面鏡2018:journey』『海』のワンシーン
『海』

石坂:撮影現場は、撮影監督との二人三脚を中心に、俳優含めベテランと若手の非常に良いチームワークで回している印象を受けました。前作はご出身の北京電影学院のメンバー中心で、内モンゴルの女性スタッフが主だったと聞きましたが、そういう意味で今回は新しい挑戦だったと思います。どのようにチームワークを作っていったのか教えてください。

デグナー:前作ではよりリアリスティックな描写にしたかったので、自演を含め素人を起用しましたし、卒業制作だったのでクラスメイトに頼るところも多く、かつ予算も限られていました。今回は、全面的にプロの俳優を起用し、皆さんとても良い仕事をしてくださいました。

石坂:デグナーさんは内モンゴルのご出身で、海の無い土地ですが、海へ散骨するというモチーフには何か特別な思いがあるのでしょうか?

デグナー:私自身、内モンゴルの中でも都会育ちだからということもありますが、一般的に遺灰を海に撒く習慣はなく、これは私の想像によるものです。しかし、キャラクター自体は私の実体験にかなり近い部分を投影しており、場所は内モンゴルではなく、海のある山東省へ旅するという設定にしました。

映画『アジア三面鏡2018:journey』『海』の撮影風景1
『海』撮影風景

石坂:自動車での移動の撮影が多いですが、中国の道路での撮影の許可取りはトラブルなく順調にいったのでしょうか?

デグナー:結構危ない部分もありました。最初のロケでは、あまり混んでいない高速道路で走らせることができたのですが、次にまた同じように撮ろうとしたら撮影許可を得られず、別の場所を探すのに3時間は無駄になってしまいました。結局、短編とはいえ長編映画と同じプロセスが必要なので、撮影スタジオの確保からポスト・プロダクションまで、(中国では)お金がかなりかかるというのが現実ですね。常に予算と照らし合わせて確認することを要しました。

映画『アジア三面鏡2018:journey』『海』の撮影風景2
『海』撮影風景

石坂:松永監督とエドウィン監督は『海』をご覧になって、どの辺に注目されましたか?

松永:まず役者がすごく前に出てきていて魅力的でした。前作も先に観ていたので、それがベースになっていたかもしれませんが、やっぱり自分と違う文化で生きている家族の話を観るのが、とにかく面白いですし、最後のクライマックスに向けての駆け上がり方がすごく好きです。また、「祈り」というテーマについてデグナー監督とも話したのですが、私の作品の舞台であるミャンマーではすごく敬虔な仏教徒が(朝から)お祈りをしている一方で、『海』では母親が祈りを金で買うという描写があり、ディテールのリンクがあるのがすごく面白かったです。

エドウィン:この映画が、デグナー監督のエピソードで始まりとても良い出だしになったと思いますし、彼女の脚本を読んだ段階から非常にインスパイアされました。読んですぐに色々なシーンが目に浮かぶ脚本の明確さが素晴らしいのと、キャラクターがとても気に入りました。特に母親像はとても共感できる部分があり、中国に限らずインドネシアにもこういう母親はいるし、そういう意味で本作は普遍的な家族の在り方、とてもモダンな社会を捉えていて、アジア全体を象徴する部分を持っています。やはりそれはディテールの描写が優れているから出来ることではないでしょうか。