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エディ・チャフヨノ――ジョグジャカルタから世界へ

Interview / Asia Hundreds

ジョグジャカルタでの映画教育

アジアセンター:ジャカルタはインドネシアの映画産業の中心地で、映画の作り手も多くいます。監督はジョグジャカルタが拠点ですが、ジョグジャカルタにも多くの映画人がいますね。

チャフヨノ:ジョグジャカルタにはお互い気軽に会話できるような雰囲気があり、会いたい人にすぐに会うことができます。これがジャカルタだったら、いちいちスケジュールを調整しなければなりません。こんなフレンドリーな雰囲気がさらに創造性を与えるのでしょう。

アジアセンター:監督はジョグジャカルタで若者のための映画学校に携わっていると伺いました。

チャフヨノ:3年前、イファがジョグジャ・フィルム・アカデミーという映画学校を創設しました。私も教えています。

アジアセンター:ジョグジャカルタには映画祭もあり、映画人のコミュニティもあり、映画を学ぶ環境に恵まれていますね。

チャフヨノ:私たちが映画の未来に責任を持つことは、とても大切なことです。フィルム・アカデミーは多くの若者を引きつけていて、うまくいっていると思います。

アジアセンター:素晴らしいですね。ジョグジャカルタではやはりガリン・ヌグロホ監督の存在も、このような状況に大きな影響を与えているのでしょうか。

チャフヨノ:ガリンはインドネシア映画界の巨匠で、インドネシアのアート映画の発展のために、たった一人で尽力してきた世代の監督です。若手の重要性をよく理解していて、ジョグジャ・ネットパック・アジア映画祭(Jogja-NETPAC Asian Film FestivalJAFF)を立ち上げました。アート映画の未来に責任を感じ、JAFFを運営するために、イファやイスマイル・バスベス*1 、ヨセプ・アンギ・ヌン*2 のような私と同じような若手映画人を集めたのです。ですから私は、ジョグジャカルタにおける映画文化の目覚ましい成長に、ガリンが果たした役割は非常に大きいと思います。

*1 映画監督。『The Crescent Moon[三日月]』(2015)が第28回東京国際映画祭「アジアの未来」部門、『The Carousel Never Stops Turning[回転木馬は止まらない]』(2017)が第30回東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA」部門で上映。

*2 映画監督。短編『A Lady Caddy Who Never Saw a Hole In One[ホールインワンを言わない女]』はショートショート フィルムフェスティバル&アジア2014でグランプリを受賞。長編『SOLO, SOLITUDE』(2016/日本未公開)が高い評価を得ている。

インタビューに答えるエディ・チャフヨノ監督の写真

アジアセンター:監督はジョグジャカルタ以外、たとえばジャカルタなど他の都市で映画を製作されることもあるのでしょうか。

チャフヨノ:現時点では、ジョグジャカルタだけで映画を作ることは非常に難しいです。私の場合は、『SITI』にAsian Shadowsという世界的に定評のある配給会社がついてくれたおかげで、国際的な映画界と繋がりができました。Asian Shadowsの豊富な経験に基づいて映画作りを学んでいます。

ワールド・セールスAsian Shadowsについて

アジアセンターAsian Shadows*3 とはどのように出逢ったのですか。

*3 アジアン・シャドウズ(チャイニーズ・シャドウズ)は香港をベースにした映画製作・配給会社。アジアの新しい世代の監督を意欲的に世界に紹介している。

チャフヨノ:『SITI』を介してです。2014年、第25回シンガポール国際映画祭での『SITI』のインターナショナル・プレミアで、ハリウッド・レポーター誌にとても好意的なレビュー(英)が出ました。その後、『SITI』に強い関心を寄せていたAsian Shadowsが、第44回ロッテルダム国際映画祭で観てくれて、気に入ってくれたんです。Asian Shadowsのイザベル・グラシャン(Isabelle Glachant*4 はイファにコンタクトを取ろうとしたのですが、最初、イファは彼女を信用しませんでした。というのも、Asian Shadowsから契約のオファーがあったとき、かなり状況が混乱していて、イファが少々不安を覚えたんです。たぶん、イファは過去に配給に関してトラブルがあったのでしょう。しかしAsian Shadowsは真摯に『SITI』を獲得しようとしてくれました。イザベルは「心からあなたたちの『SITI』が好きなの。だから、多くの人に観てもらえるよう、様々な国や映画祭で紹介したいの」とイファを説得し、『SITI』を海外で上映できるよう助けてくれたのです。

*4 映画プロデューサー。2004年エグゼクティブ・プロデューサーとしてワン・シャオシュアイの『青紅~Shanghai Dreams』(2005)を製作。エディ・チャフヨノ、モーリー・スリヤ他、新世代の中国人やインドネシア人監督とプロジェクトを企画中。タレンツトーキョー2016のメイン講師を務めた。
『「タレンツトーキョー2016」参加者(タレンツ)及びメイン講師決定!』ページ

アジアセンター:海外での観客の反応はいかがでしたか。

チャフヨノ:とても気に入ってもらえたと思います。『SITI』と共に上海や台北など、私も多くの映画祭に参加しました。私たちはAsian Shadowsとはコミュニケーションしやすいですし、Asian Shadowsは私たちとのコラボレーションに興味があったのです。

映画のスチル画像
エディ・チャフヨノ『SITI』(スチル)2014年

新作『Wasted Land』について

チャフヨノ:2015年に釜山のアジア・プロジェクト・マーケット(釜山国際映画祭併催の企画マーケット)に参加した際、私の新作『Wasted Land』の企画がARTEという仏独共同出資のテレビ局の賞を受け、出資を得られることになりました。このおかげで、脚本を書き進めることができるようになりました。現時点では、イファとAsian Shadowsのイザベルがこの最新作のプロデューサーです。脚本がまだ良い出来ではなく、推敲しているところです。

アジアセンター:最新作『Wasted Land』について、もう少し教えてください。

チャフヨノ:『Wasted Land』は、必死に娘に会おうとする若い母親の物語です。娘が中国で薬物取引の容疑をかけられ、死刑を宣告されてしまい、母親は最後に一目、娘に会おうと躍起になる。そんなストーリーです。

アジアセンター:最新作も女性が主役ですが、女性を主人公として採用する理由はありますか。

チャフヨノ:インドネシアでは男性のキャラクターよりも女性のキャラクターの方が面白いと感じます。インドネシアには、生活のため、家族のために懸命に働く強い女性がたくさんいます。だから私は、女性の物語を描くことにより関心があるのです。もちろんいつかは男性について語る映画も作ってみたいですが……。ただ、今はまだ女性のキャラクターに興味があるんです。

アジアセンター:最新作の完成を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

エディ・チャフヨノ監督の写真

【2017年1月26日 アテネ・フランセ文化センターにて】

参考情報

Fourcolours Films公式Webサイト(英)

Asian Shadows公式Webサイト(英)

Jogja Film Academy公式Webサイト(インドネシア語)

Jogja-Netpac Asian Film Festival公式Webサイト(英語/インドネシア語)

『SITI』予告編


編集:西川亜希(国際交流基金アジアセンター)
写真:小出昌輝