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国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
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橘慶太――アイドルからクリエイターへ。w-inds.が切り拓く日本とアジアの最先端ポップ・ミュージック

Interview / Asia Hundreds

w-inds.が抱く、アジアをまたいだ目標とは?

:2018年7月4日にアルバムが出て、7日には「w-inds. Fes ADSR 2018 -Attitude Dance Sing Rhythm-」という自分たちがプロデュースしたフェスもやったんです。そこから13日にツアーが始まった。大変だったんですけど、やり甲斐はありました。やっぱり自分たちがやりたいことをどんどん実現していこうという思いでやっているので。

w-inds. フェスの写真
東京・お台場で開催されたw-inds. Fesには13組のアーティストが集結。約5,000人の観客で賑わった

:「w-inds. Fes ADSR 2018 -Attitude Dance Sing Rhythm-」はダンス&ボーカルグループを中心にしたラインナップでした。これはどういう構想だったんでしょうか。

:もともと僕が2年前くらいからやりたかった企画なんです。それこそアジアでいろんなダンス&ボーカルグループや、ソロアーティストの人気がでてきているし、日本にも実力のある人が沢山いる。そういう人達とひとつのムーブメントを作りたい気持ちがあったんです。こういうフェスって意外となくて、ずっと寂しいと思っていたので。ゆくゆくはアジアでこれをやりたい目標もあります。

:アジアでw-inds.がフェスをプロデュースするというのは、すごく楽しみな目標ですね。その先にはどんな未来を見据えていますか。

:もっと日本のアーティストとアジアのアーティストとのコラボレーションが増えてほしいというのはありますね。アジアが一つになったら、より大きなマーケットができる。日本とか、韓国とか、インドネシアとか、それぞれの国が一つになって、アジアの音楽が一番格好いいと言われる時代がくることを望んでますね。

:現時点でもそういう動きは顕著になってきていますよね。たとえば88rising*5 というレーベルからデビューしたリッチ・ブライアンのように、インドネシアの10代の少年がいきなり世界的なスターになってしまうような例がある。

*5 2015年、代表者のショーン・ミヤシロ氏によりNYに設立されたアジアン・カルチャーを発信するメディアプラットフォーム。自社レーベルから数々のアジア系アーティストを輩出し、米国のヒップホップシーンで注目を集めている。

:そうですね。アジアでそういう動きをもっと作れたら面白いなって思います。時代を作る人は常に若者だという僕の考えがあるので。次のスターになるべき若い人が出てくるようサポートできたらいいなと思います。

:ベトナムやインドネシアやマレーシアや、いろんな国でYouTubeで音楽を聴いている子供たちが次のスターになるかもしれない。

アジアハンドレッズのインタビュー中の橘氏と柴氏の写真
アジアハンドレッズのインタビューに答えるw-indsの橘氏の写真

:そうですね。絶対にありえると思います。以前、フィリピンに行って、台風の被害にあわれた地域の支援として設立した学校を訪問したことがあって*6 。その学校の子たちと一緒に歌ったり踊ったりしていたら、めちゃくちゃ格好いいんです。小学生が、その時に世界で一番流行っているダンスムーブをやっている。みんな動画で見て覚えたらしくて。歌の上手い人も多いし、新しい動きを若い子がどんどん取り入れているんですよね。

*6 w-inds.は2015年9月にフィリピン・レイテ島を訪問。レイテ島はその2年前の2013年に台風で甚大な被害を被った。

:そういった未来のために、橘さん自身は第一線のクリエイターやパフォーマーとして活躍しつつ、土壌を耕すことを考えているわけですね。

:そうですね。自分たちだけ突き抜けてもムーブメントは作れないと思うんです。いろんな人たちが出てきて、それが一つの大きな渦になると思ってるので。もちろん自分たちが第一線で活躍し続けることも大切ですけれど、その他にも同士を作って一つの大きな渦を巻き起こすということも忘れちゃいけないなって思いますね。

アジアハンドレッズのインタビュー終了後の橘氏と柴氏の写真

【2018年7月26日、CREATOR'S CO-WORKING SPACE PROPにて】

橘慶太、柴那典のリコメンド曲は?

2018年、K-POPグループ・BTS(防弾少年団)が米国ビルボード・アルバムチャートで2作連続初登場1位を記録するなど、世界を舞台としたアジアのポップ・ミュージックの躍進には話題が事欠かない。また、アジアの各都市では、グローバルな音楽トレンドとリンクしながら、その土地独自の音楽カルチャーも生まれている。
今回対談を行った橘慶太、柴那典もその動向を現在進行形で追いかけている。両氏には、アジア圏のリコメンド曲をキュレーションのうえ、橘氏はw-inds.公式spotifyアカウント、柴氏は自身のspotifyアカウントにてプレイリストを作成いただいた。2人と共に、2018年現在のアジアの最新ポップ・ミュージックを体感しよう。

w-inds. 橘 慶太 セレクト

橘氏の写真

東南アジア×w-inds. Future,R&B,HipHop

トレンドを抑えたトラック。東南アジアにとどまらず世界のミュージックシーンで戦えると感じるアーティスト、楽曲達です。

音楽ジャーナリスト 柴 那典 セレクト

柴氏の写真

Asian mellow and cutting-edge (エイジアン・メロウ・アンド・カッティングエッジ)

メロウネスと先鋭性を兼ね備えたアジアのアーティストたちの楽曲を、国境もジャンルも超えてセレクトしました。オルタナティブR&Bな序盤から、シティポップリバイバルを経て、インディポップな中盤、バンドサウンドから再びエレクトロニックに回帰していく終盤。インドネシア、タイ、ベトナム、シンガポール、フィリピン、台湾、韓国などの国や地域じゃなく、サウンドの感触で流れを作ったプレイリストになっています。


インタビュー・文:柴 那典 (しば・とものり)
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。
ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手掛ける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。著書に『ヒットの崩壊』(講談社/2016年)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版/2014年)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版/2017年)がある。

インタビュー写真:佐藤 基
編集:亀井 恵里(国際交流基金アジアセンター)