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シティ・カマルディン――映画『ドラゴン・ガール』にみるブルネイの今

Presentation / Asia Hundreds

ブルネイでの表現の自由について

質問者E:日本では映像コンテンツとしてアクションやセクシャルなものも楽しまれていますが、暴力あるいは性的な表現など、日本等の先進国と保守的なイスラム教の国とでは全然違うと思うのですが、ブルネイのことをあまりにも知らないので、ブルネイでの表現の自由について教えてください。

カマルディン:検閲というのはブルネイにもあります。やはりイスラムの教えの国なので、性的な表現っていうのはかなり大きく制限されますね。ただアクションに関してはほとんど規制がないです。今回の『ドラゴン・ガール』はヤスミンを主人公にしたアクションものということで、映画を観ていない人たちは自動的にイスラム教で女性が主役なので戦えないだろうと思った方が多いのですが、そういうことはありません。女性でも戦っていいんです。確か私の知る限り、シラットのブルネイの初の金メダリストは女性でした。ですからそういったことに関しては全く規制はありません。

またアクションということに付け加えて言うと、今回映画でシラットというものを描くにあたって、生存や戦いを描く今までのアクション映画とは一線を画して、格闘技を通して「愛」を描きたかったというのが根底にありました。また格闘技を通して成長の物語を描ければと思いました。私は格闘家ではないですが、分かるのは、時に私達は皆何かを欲し、その何かを手に入れようと突き進む工程で進化・成長すること。またその中で何か他のことや愛するものに出会ったりするということ。例えば当初の目的がちょっと不純な動機だったとしても、結局は映画で主人公のヤスミンが最終的な選択をしたように、何かを最終的に発見していくことが人生であり、そのプロセスが大事だと思います。またどんな人でも家族とけんかしたり、彼氏や友達のことで悩んだりといった経験を経て成長していく、その成長の過程はどんな背景や国の人でも通る道であり、映画共通の言語であると思います。

初めての長編映画に費やした期間や今後の展開

質問者F:ご自身の初めての長編映画ということで、いろいろな支障というか、問題がたくさんあったと思うのですが、具体的にはどれぐらい時間をかけて、この作品を撮られたのかなと思って。それを質問したいと思います。

トークイベントで語るカマルディン監督と聞き手の松下氏の写真

カマルディン:3年かけてストーリーを練り、3カ月の準備期間を経ました。この間に俳優たちはトレーニングを積んでいました。撮影期間は45日です。予算の制約があったので、撮れない日があったらその間は編集をしました。編集をしている間に編集担当と仲良くなって、みんな少人数の仲のいいメンバーでやっていったので、本当に愛によって作られたと言えると思います。資金調達から入れると通算4年かかりました。私の4年間の人生が2時間に詰まったこの映画を観ていただいてありがとうございます。

質問者G:10代のまっすぐな気持ちがすごく伝わってきて、分かりやすくてよかったです。もうちょっと初恋の人や、ヤスミンのグループのうちの1人の男の子とヤスミンが恋愛的にどうだったのかをちょっとだけ最後見たかったです。

カマルディン:ヤスミンの恋愛がこれからどう発展していくかは皆さんが自分で好きなように想像するほうが楽しんじゃないかなと思うので、お任せしたいと思います。

質問者H:次回作は何か予定がありますか。すごく好きで次の作品を楽しみにしているので、何か予定があるかどうか教えてください。

カマルディン:ありがとうございます。プロデューサーのお許しが出れば、いろいろお話できるのですが、残念ながら実はまだ情報解禁ができないんです。ただ言えることは、時代劇、時代ものになりますね。今は調査と脚本の段階で、まだストーリーを考えているところです。全て進んで、撮影が始まるとしても来年になるかなと思います。

松下:皆さん本当にたくさんのご感想とご質問をお寄せくださりありがとうございました。かなり駆け足のQ&Aとなりましたが、本日は足をお運びになり、ブルネイからの映画をご覧いただきありがとうございました。


『ドラゴン・ガール』予告編

編集:滝本亜魅子(国際交流基金アジアセンター)
挿図提供:108 Media Corp
写真(上映会・アフタートーク):御厨 慎一郎