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国際交流基金アジアセンターは、アジアの人々の間に共感や
共生の心を育むため、様々な分野で文化交流事業を実施しています。

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国際フォーラム「Innovative City Forum 2018 アジアセンターセッション」開催レポート

Symposium / Innovative City Forum 2018 国際交流基金アジアセンターセッション

登壇者のプロフィール詳細はInnovative City Forum公式サイトをご覧ください
Innovative City Forum 2018 登壇者一覧

柄理事の写真
基調講演の様子

Photo@Haruo Wanibe

共催者代表挨拶

柄 博子(Hiroko Tsuka)/国際交流基金理事

キーノート第一セッション

10月18日(木曜日)のDay1冒頭、Innovative City Forum(以下、ICF)のプログラム・コミッティーを代表し、竹中平蔵氏による開会の挨拶に続き、国際交流基金理事・柄博子が共催者を代表し挨拶を行い、その後、プログラム・コミッティーである市川宏雄氏、南條史生氏、伊藤穣一氏と上記竹中氏による、ブレインストーミングが行われました。続けて、3名の基調講演ゲストが、哲学・アート・環境問題のそれぞれの観点から基調講演を行いました。

国際交流基金アジアセンターセッション開会式

鈴木 勉(Ben Suzuki)/国際交流基金アジアセンター

今回のフォーラムの全体を貫くテーマはInnovation for Happinessで、このアジアセンターセッションでは、特に文化や芸術をテーマに、それもアジアという切り口を加えて構成しているセッションです。このイノベーションという言葉は、本来の意味は、新しい結合とか、異分野融合という意味であり、そこに、イノベーションと私たち自身の幸福の関係性を考える鍵があると思います。技術革新による経済発展は、本当に私たちを幸福にするのだろうか? イノベーションという言葉をもう一度深く考えてみる必要があるのではないか。それがこのフォーラムの出発点です。

ICF初日から2日間では、主に人口知能やビッグデータを含む先端技術、都市開発、経済、産業、というテーマにそって議論が行われました。

そこで私たちアジアセンターとしては、このイノベーションというキーワードを、より生活に密着した、ヴァナキュラーな視点から眺め、私たちの日常にこれまでも、そしてこれからも存在するけれど、可視化されていない、または言語化されていないものを探求し、見つけ出し、それを人々の技(わざ)としてのテクノロジーに繋げてゆく、または開いてゆくといったことを、このセッションのキーコンセプトとしました。その流れの中で本日3日目では、日本と東南アジアのそれぞれの分野の専門家にお話しいただきます。それでは皆さん、あらゆる感覚を鋭くして、このアジアセンターセッションをお楽しみください。

オープニング・セッション

佐々木 芽生(Megumi Sasaki)

佐々木監督の写真
Photo@Tatsuyuki Tayama

総合モデレーターのお話しをいただき、今回のテーマが「Innovation for Happiness」と聞いて、最初に思い起こしたのは、初監督作品のドキュメンタリー映画「ハーヴ&ドロシー」の主人公ご夫妻のことでした。郵便局員と図書館司書のお二人が、つつましい生活の中から世界有数のアート・コレクションを築き、最後まで一点も売らずに米国立美術館へ寄贈したと聞いて、強烈に心を打たれました。映画制作のプロセスは、自分がなぜ映画を撮ろうと思ったのか、その答えを探す旅に出るようなものです。「この感動を伝えたい!」という一心で4年かけて映画を完成させましたが、二人の生き方を間近に見ながら「人の幸せとはなんだろう?」と深く考えさせられました。

その後、佐々木監督から最新作「おクジラさま」の紹介と、映画制作の動機についてのトークがありました。舞台となった和歌山県太地町は、イルカ漁で国際社会から批判の矢面に立たされている小さな町です。「捕鯨についてなぜ欧米では一方的な反対意見しかないのか、また日本側からは国際社会に糾弾されながらなぜ有効な反論がないのか。」その答えを求めて撮影を進めていくうちに、映画のテーマは捕鯨問題そのものではないと気づいたそうです。人種、宗教、価値観などが違う私達は、なぜ分かり合えないのか。太地町という小さな漁師町で起きている国際紛争を撮影しながら、無理解の行き着くところは戦争ではないか、と問題提起をしていただいた後、檀上からトラン・アン・ユン監督を招き入れ、キーノートが始まりました。

佐々木監督とトラン監督による対談の写真1
Photo@Tatsuyuki Tayama

【キーノート】「映像表現におけるシネマ・ランゲージ」

トラン・アン・ユン(Tran Anh Hung
佐々木 芽生(Megumi Sasaki)

「食べる」に関して

トラン・アン・ユン(以下、トラン):私の幼少時代は、裕福な家庭ではありませんでした。家には貧しいキッチンがありましたが、そこで多くのことを学びました。当時、台所は薄暗くていい匂いはしませんでしたが、台所の上を見上げると「グアバ」の木が見えました。グアバの良い香りとキッチンの悪い香りのミックスこそ、私にとっての美でした。両面の複合的なこと、感覚的なことを学びました。

佐々木 芽生(以下、佐々木):トラン監督による映画「青いパパイヤの香り」では、主人公がパパイヤの中身を初めて見た時の驚きが描かれていますが、トラン監督はいつ、パパイヤの中身を知ったのですか?

トラン:幼少時より好奇心が旺盛で、パパイヤの中身がどうなっているかなぁと思っていました。「パパイヤ」というのは特別なフルーツです。その調理の仕方をみていくと、特別な音がします。音で、「あっ、パパイヤを切っているな」と分かります。

佐々木監督とトラン監督による対談の写真2
Photo@Tatsuyuki Tayama

「映画」に関して

トラン:映画を作るうえで、私にとって一番重要なのは「俳優の皮膚」です。スクリーンで皮膚の感覚が伝わるかどうかです。撮影クルーによく言うのは「皮膚感覚を出してくれ!」ということです。これには多くの内容を含み、要求しているのです。俳優の皮膚や背景が、スクリーンの枠組みにどう馴染んでいくのかをみています。

また、音響スタッフには「Taste is good, because of the sound.(美味しさの表現は、音が秘訣)」と伝えています。本当なのですよ。音で映像が変わりますし、音のおかげで映像は美味しくなります。

佐々木:五感をフルに使っていらっしゃるんですね。もっともっとお話しをお聞きしたいところですが、お時間が来てしまったようです。トラン監督とお話しできて光栄です。本日はありがとうございました。

会場では、「映画」という共通の世界にいる佐々木監督が、モデレーターとしてトラン監督の本質を聞き出すべく、時にプロデューサーの目線や1人の作り手として、トラン監督に質問を投げられました。その問いに応じて発言される内容で、トラン監督の映画に流れる磨き抜かれた美意識や、人を魅了する感受性が引き出されていました。 トラン監督のトークについては下記の特集記事もぜひご覧ください。

トラン・アン・ユン――The Language of Cinema(映画言語)について語る