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インドネシアのFilosofi Kopi――映画を軸にした新たな展開

Interview / 第29回東京国際映画祭

役者と監督の関係性

AC:チコさんは、アンガ監督の『モルッカの光』(2014年/第25回アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映)と『珈琲哲學』では主演俳優として、『プラハからの手紙』(2015年/第26回アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映/リオ・デワント出演)ではプロデューサーとして関わっています。アンガ監督との仕事はどのようなものですか?

チコ・ジェリコ(以下、チコ):『モルッカの光』は私の初主演作でしたが、アンガ監督は私を信頼し、とても大きな役を与えてくれました。その結果、2014年のインドネシア映画祭で主演男優賞を受賞することができました。アンガ監督との仕事は、私にはとてもやりやすいんです。アンガ監督やリオとの仕事は、気心が知れているので、いろいろな可能性を追求できます。
私も『珈琲哲學』をただの映画で終わらせたくありません。実際にカフェを開いたのも、インドネシアのコーヒーがどれだけ素晴らしいか、世界中に知ってもらいたいからです。インドネシアのコーヒーが、ブルーボトルコーヒー*1 と同じような知名度を持てればと思っています。

*1 米国に本社を構えるサードウェーブコーヒーの代表格。

チコ・ジェリコ

AC:リオさんにもお伺いします。アンガ監督は今回の「CROSSCUT ASIA カラフル!インドネシア」の中でもっとも若い監督ですが、ご自身と同世代の監督との仕事は、他の現場と比べ、何か違いはありますか。

リオ:『モルッカの光』が初めて観たアンガ監督の作品で、監督の演出とチコの演技に心を揺さぶられました。そして、こんなパワフルな映画を作る監督といつか仕事をしたいと思っていました。
ある日、チコが電話で、『珈琲哲學』のジョディ役を私にどうかと提案してくれたんです。その後、実際にアンガ監督に会って話を伺い、関わることになりました。『珈琲哲學』に参加できたことを名誉に思っています。このような可能性を秘めた映画を作るということは、インドネシア映画全体の成長にもつながるからです。いい仕事をするためには、監督や共演相手と気心の知れた関係でないと難しいと思いますが、私たち3人は友人以上、まるで家族みたいな関係なんです。
ちなみに、チコと私は、互いをよく知るようになったのは映画界に入った後ですが、実は同じ高校出身です。当時は、私が一方的に彼のことを知っているだけでしたが(笑)。

アンガ:チコは高校時代からモデルをしていたので、有名人だったんですよ。

リオ・デワント

実際の2人の性格

AC:映画の中で、主役の2人は最高のコーヒーを作るという共通の目標を持っていますが、性格は対照的です。リオさん演じるジョディはビジネスライクで、チコさん演じるバリスタのベンは自由を求めながらも完ぺき主義者。実際にお二人はカフェを一緒に手掛けていますが、どのような関係でしょう。

リオ:役柄と同じです(笑)。

チコ:ジョディ、つまり、リオはビジネスのことをよく知っています。

リオ:ベン(チコ)は職人気質です。カフェには何人かバリスタがいますが、コーヒーの淹れ方だけでなく、お客さんへの接し方まで、チコが全員をトレーニングしました。外見や話し方、動き方に至るまで、バリスタのキャラクターが全員違うんです。おもしろいですよ。

チコ:それぞれのバリスタに、キャラクターを演じてもらっているわけです。ちなみに、ベンとジョディの性格を合わせると、アンガ監督になりますよ(笑)。

AC:監督ご自身はどう思いますか?

アンガ:どうでしょう(笑)。でも、アート映画ではないと思って、脚本を書いていたのは確かです。誰もが楽しめる映画にするため、キャラクターやプロットに工夫が必要でした。そういった意味で、まったく逆の性格の2人(芸術家とビジネスマン)を置くのは、とても簡単な仕掛けなんです。コーヒービジネスや映画界に限らず、トムとジェリーのような全然性格が違う2人、対照的なキャラクターを置くということは往々にしてあることですよね。
私自身、プロダクション会社Visinema PicturesのCEOで、同時に映画監督でもあるわけです。つまり、ビジネスのことも、クリエイティブのことも考えなければならない。だから今、チコが言ったように、私の中にはベンとジョディ両方の性質があるのでしょう。

AC:リオさんとチコさんの信頼関係を強く感じますが、アンガ監督は、俳優としてのお二人をどう思いますか。

アンガ:『珈琲哲學』が成功した秘訣は、ジョディとベンの関係性が最高の「ブロマンス(Brother+Romanceの造語)」を生み出したからだと思います。同じヴィジョンを持っていたからこそ、関係性がとても強かった。今や、この2人はインドネシアを代表する俳優です。偉大な役者として成功する鍵は、どんな役柄でも謙虚な姿勢で挑むことでしょう。彼らにはもちろん才能もありますが、いつもオープンな気持ち、驕り高ぶらない謙虚なアプローチで取り組み、心を開き、目を開き、耳を開いて、役を演じてくれたので、いい仕事ができたのだと思います。

『珈琲哲學―恋と人生の味わい方―(仮)』について語るアンガ監督