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響きあうアジア2019 “日本語パートナーズ”の国際シンポジウム(6月27日(木曜日))記事を掲載します!

国際交流基金アジアセンターは、「響きあうアジア2019」の一環として、“日本語パートナーズ”派遣事業の約5年間の成果を紹介し、今後の可能性について議論する国際シンポジウム「外国人材登用時代における日本語教育―“日本語パートナーズ”派遣事業の経験をもとにして―」を、6月27日(木曜日)に日経ホールで開催しました。
本シンポジウムの採録を、7月30日(火曜日)の日本経済新聞朝刊に記事体広告として掲載しましたので、その内容を本サイトに掲載します。ぜひご覧ください!

シンポジウムの様子

国際シンポジウム
外国人材登用時代における日本語教育
―“日本語パートナーズ”派遣事業の経験をもとにして

国際交流基金アジアセンターは、アジアの中学・高校などの日本語教師や生徒のパートナーとして、日本語授業のサポート等日本語教育支援を行う“日本語パートナーズ(NP)”派遣事業を2014年からアジア各地で展開してきた。同センターでは文化交流事業を幅広く紹介する「響きあうアジア2019」を6月から7月にかけて開催。これに合わせ、過去5年間のNP事業の成果を振り返りつつ、今後の可能性についても議論するシンポジウムを東京都内で開催した。

主催者挨拶
国際交流基金理事長 安藤 裕康

国際交流基金安藤裕康理事長の写真

派遣後も広がる友好の輪
国際交流基金アジアセンターは、2013年12月の日・ASEAN特別首脳会議で安倍晋三首相が発表した「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト」を受け、14年4月に設置された。同センターではNP派遣事業による日本語学習支援と芸術・文化の双方向交流を2本柱としてプロジェクトを推進してきた。
今年5月にはNP派遣事業に関するシンポジウムをインドネシア教育文化省とジャカルタで共催し、派遣期間終了後もNPと現地の人々との友好の輪が広がり続けていることを確認できた。
本事業は20年に終了予定だが、国際交流基金では21年以降の継続を模索していきたいと考えている。

来賓挨拶
衆議院議員・自由民主党幹事長代行 萩生田 光一氏

衆議院議員・自由民主党幹事長代行萩生田光一氏の写真

共生社会実現に事業継続を期待
NPは日本のよさを心尽くしで派遣先の人々に伝えており、その活動が親日家の育成につながっている。昨年11月に東京で開催された、過去1年間に帰国したNPへの感謝状贈呈式では、帰国後も友好関係が続いていることを私自身直接聞いた。NPに参加したことで人生が変わった、次に進むべき道が定まったなど、事業が参加者に与えた影響も実感した。
NPには、アジアでの滞在経験を通じて培った相互理解の精神を生かし、日本における多文化理解や共生社会の実現に向けた取り組みに貢献する人材としての活躍を期待する。NPの応援団長として、本事業の継続に注力することを改めて約束する。

来賓挨拶
インドネシア教育文化省教員総局長 スプリアノ氏
(インドネシア教育文化大臣ムハジル・エフェンディ氏からのメッセージ代読)

インドネシア教育文化省教員総局長スプリアノ氏の写真

文化交流で人格の形成に貢献を
インドネシア共和国政府を代表し、日本政府および国際交流基金がインドネシアにおける日本語教育の質の向上に大きな貢献をしていることに感謝する。NPの活動により人と人とのネットワークができ、それによって文化の紹介が双方向で行われることは非常に有意義だ。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、ハードインフラと同時にソフトインフラも重視している。文化はその国の品格をつくるものだからだ。NP事業が継続され、次のステージでは、言語、文化を教えるだけではなく、国内外で活躍できる学生の人格形成の力となることを期待する。本シンポジウムが文化の違いを超えた相互理解の促進と世界平和に貢献することを望む。

学習者メッセージ
南山大学総合政策学部2年 ピムヤーダー・パッタナピムボン氏(タイ)

南山大学総合政策学部2年ピムヤーダー・パッタナピムボン氏(タイ)の写真

留学や日本企業への就職のきっかけに
私は子供のときから日本の漫画をたくさん読み、日本の文化や日本語を学びたいと思いタイの高校の日本語コースを履修した。3年生のときにNPのカナ先生が来た。私の学校に初めて来た日本人の先生だ。カナ先生は日本語スピーチコンテストに参加する私たちの練習や日本語能力検定試験の準備などを手伝ってくれた。また、七夕祭りなどの文化イベントを一緒に行い、生徒や先生にさまざまな日本文化を紹介できた。
外国の高校などにもっとNPが派遣されれば、学生はもっと積極的かつ効果的に日本語を勉強でき、日本の大学への進学や日本企業への就職などのきっかけづくりになると思う。


セッション1:双方向の交流から生まれる絆と広がる共感

パネリスト:

NP・インドネシア5期渡邉健也氏の写真
NP  インドネシア5期 渡邉 健也氏
NP・タイ4期可知 恵美子氏の写真
NP タイ4期 可知 恵美子氏
NP・ベトナム3期三島保氏の写真
NP ベトナム3期 三島 保氏
ブキティンギ第3国立高等学校教師(インドネシア)ラフマウィトリ氏の写真
ブキティンギ第3国立高等学校教師
ラフマウィトリ氏(インドネシア) 
カナラートバムルン・パトゥムターニー校教師(タイ)タナナン・ウィチッパシャ氏の写真
カナラートバムルン・
パトゥムターニー校教師
タナナン・ウィチッパシャ氏(タイ) 
ラントゥオン中学校教師(ベトナム)フン・ティ・チン氏の写真
ラントゥオン中学校教師
フン・ティ・チン氏(ベトナム)

モデレーター:

広島大学特任教授迫田久美子氏の写真
広島大学特任教授
迫田  久美子氏

今後は「生む絆」「広げる共感」を目指したい

迫田:NPとカウンターパート(CP)の現地の先生の活動内容を聞きたい。

渡邉:私はインドネシアの高校に派遣され、日本語の授業と日本文化の体験・紹介活動を行った。授業では発音のモデルや会話練習の相手を務め、生徒一人ひとりが日本人と日本語でコミュニケーションをする、その体験を積めるように心がけた。文化紹介では、おにぎり作り、書道、浴衣の着付けなどを行った。

ラフマウィトリ:当校では全校生徒1071人中315人が日本語を勉強している。週1回の日本語クラブでは日本料理、踊り、書道などを体験している。お互いにコミュニケーションを図りたいとの思いが強く、NPはインドネシア語を、CPや生徒は以前より日本語を熱心に勉強している。

可知:私はタイの中高一貫校に派遣された。タイの日本語スピーチコンテストでは一生懸命生徒と一緒に練習したが、惜しくも全国大会出場を逃した。悔しい思いをしたが、生徒たちがすぐにまた翌年に向け練習を始めてくれたことがとても心に残っている。

タナナン:当校では日本語の授業を専攻クラス、選択クラス、日本語文化クラブで実施しており、日本語の学習希望者が年々増加している。NPはいつも笑顔で生徒や先生と接しており、「ほほ笑みの人」という印象だ。NPが来るようになってからは、脱いだ靴をそろえる、授業開始時刻を守るなど生徒の生活態度が変わった。

三島:私はベトナムのダナンに派遣され、高校1校と中学校2校で活動した。日本の学校との交流に特に力を入れ、私が住んでいた奈良市の中学校と年賀状のやりとりを行った。高校で実施した俳句を作る授業では少し難しいのではと懸念があったが、「青春の夢かなえるがんばろう」「風が吹く雲が泳ぐや少し寂しい」などの句を生徒が作り、CPにも好評だった。

チン:当校の日本語クラスは4つあり、1クラスは40人ぐらいだ。授業では2017年にNPからもらった「桃太郎」や「鶴の恩返し」などを読む時間を設けている。NPには生徒の発音のサポート等をお願いしているが、NPの存在が生徒のやる気をアップさせている。

迫田:NPの魅力はどこにあるか。

渡邉:未知を知ることで自分が成長できることが最大の魅力だ。

ラフマウィトリ:家族のような出会いと絆。授業だけでなく、NPとは食事や買い物、遊びに行ったりもした。NPが帰国後も、SNSで交流を続けている。

タナナン:NPは日本からすてきな笑顔を届けてくれた。その笑顔が日本語の授業を楽しくし、私たちの心を明るくしてくれた。

可知:NPの活動は、異文化との出会いと感謝の気持ちをもたらしてくれる。

チン:NPはアジアの懸け橋だ。アジア各国の人々に、友好の輪を広げていってほしい。

三島:NP活動は教師と生徒という垣根を越え、人と人との心の交流をもたらしてくれる。

迫田: このセッションのテーマ「双方向の交流から生まれる絆と広がる共感」に使われている「生まれる」「広がる」という言葉は、自然とそうなるという自動詞だ。多文化共生の社会へと変化する日本の未来を考えると、私たちは「生む」「広げる」という働きかけの他動詞を使う時期に来ているのではないか。生む絆、そして広げる共感を目指していきたい。

セッション1の様子

セッション2: これからの日本を見据えた“日本語パートナーズ”事業の意義

パネリスト:

NHK国際放送局シニア・ディレクター道傳愛子氏の写真
NHK国際放送局シニア・ディレクター
道傳 愛子氏
タマサート大学副学長キティ・プラサートスック氏の写真
タマサート大学副学長
キティ・プラサートスック氏
リンクウィズ代表取締役吹野豪氏の写真
リンクウィズ代表取締役
吹野 豪氏

モデレーター:

日本語教育研究所理事長西原鈴子氏の写真
日本語教育研究所理事長 
西原 鈴子氏

違いと共通性の両面理解にNPは有用

西原:NP事業の意義は何か。

道傳:アジアで日本語の学習熱が高まっていることは、取材をしていても感じる。言葉を身につけ、新しい文化を知れば、世界の見え方が変わってくる。NPを通じてもっと勉強がしたい、もっと広い視野で世界を見てみたいと思う生徒たちが育つことは意義深い。今後はその学びを、さらに深める次のステップを用意することも課題だろう。また、NP事業はNP自身の世界を見る目も変えている。帰国後もNPは日本で新たな交流を生んでいる。日本の企業や社会は、まだ多様化に向かっている途上にある。NPを通じてアジアで双方向の交流が生まれることは、日本の今後にとっても意義がある。

キティ:1970年代にはタイやインドネシアで激しい反日運動が巻き起こった。しかし、80年代後半から多数の日本企業が東南アジアに進出し、ポップカルチャーなど日本文化が伝わることで日本のイメージは改善された。現在の日本と東南アジアとの関係は相互依存度がさらに高くなり、極めて親密だ。ただし、文化面では中国や韓国、シンガポールの人気も高まっており、選択肢は日本だけではない。今後の日本社会は外国人勤労者の受け入れ増加が必須であり、多文化共生社会に向けての取り組みがますます必要になる。その意味でも、NP派遣事業を継続し、NP2.0、NP3.0に向けて改善しながら継続的に実施していくことが重要だ。

吹野:当社は産業用ロボット向けのソフトウエア開発のスタートアップだ。当社はワーク・ライフ・インテグレーションを実現しており、業務状況に応じて子どもを会社に連れきても構わない。このため学校が休みになると、たくさんの子どもたちが会社の中にいる。そして、社員の4割程度は外国人だ。本シンポジウムでは「響きあうアジア」(ASIA IN RESONANCE)を掲げているが、音楽用語ではRESONANCEは「共振」を意味する。中間に壁があったら響き合わない。その壁とは言語ではなく、人々の先入観だ。

西原:どうすれば、一番効果的にダイバーシティは実現できるのか。

吹野:違う文化の人がいて当たり前という文化が多様性やダイバーシティを生んでいく。自然発生するものではない。当社の場合は、シンプリシティーファーストという皆が納得できるルールにしている。基本的に同じ目標を持つこと、皆が納得できるルールづくりが大事だ。

道傳:マイノリティーの意見もきちんと包括できる仕組みにする必要がある。

キティ:人間であれば共通点は多い。多様性を理解した上で共通性を探る。ダイバーシティで違いを理解するだけではなく、共通性を強調することも重要だ。

西原:違いと共通性、その両方の理解を促進するNP事業は今後も続けていくべきだ。

セッション2の様子

日本語パートナーズ(NP)とは

NPの応募条件は20〜69歳までの日本国籍を有する人、日常英会話ができる人、派遣前研修(約1カ月間)に全日参加できる人等で、日本語教育の資格や海外滞在経験などは不問(派遣先によって一部条件が異なる)。NP自身が現地の言葉や文化を学ぶなど、相互理解のよい機会になるのがNP事業の特徴だ。
国際交流基金アジアセンターは2014年度の事業開始から18年度末までに累計1860人を派遣し、136万人を超える生徒や地域の人々に日本語や日本の魅力を伝えてきた。国別派遣人数はインドネシア610人、タイ422人、台湾170人、中国184人、ベトナム224人、マレーシア146人、フィリピン53人、ミャンマー16人、カンボジア15人、ラオス12人、シンガポール4人、ブルネイ4人。
派遣先の学校の99.3%がNPの活動を高評価しており、派遣校の29.7%で日本語授業数が増加。日本語履修者数も派遣校の46.8%で増加した。同基金では19年度末までにNP累計2500人突破を目指している。

(企画・制作=日本経済新聞社 イベント・企画ユニット)

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