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伝統葬儀「ランブソロ」で見た死生観

Selamat siang(こんにちは)!

日本語パートナーズへの参加の動機の一つは、大学時代に学んだ人類学の知識を深めたいということでした。特にその中でも「通過儀礼」にはより一層の興味がありました。

そこでインドネシアの死生観を体感するため、中部スラウェシ州にあるタナトラジャの伝統葬儀「ランブソロ」(ランブは水牛、ソロは儀式の意味)に参加して来ました。

ランテパオという村の郊外の写真
ランテパオという村の郊外で行われました。

この地域で暮らすトラジャ族は、一生を通して得る収入よりも大きい額を葬儀に費やします。一生懸命働くのは最期のためと言われるほどです。

そして、死は突然訪れる悲しいものではなく「プヤ」と呼ばれる魂の行き着く先へ向かう1つの流れだと、また牛は死者の魂を天国へ連れて行く乗り物で、多く生贄にするほど早く天国にたどり着けると信じられています。

ランブソロの独特な模様とモチーフの飾り布の写真
様々な民族が混在するインドネシアの中でも、独特の死生観を持つトラジャ族。

今回は運に任せてタナトラジャまで行きましたが、シーズンということもあり運良くランブソロを見学することができました。

門をくぐると驚きました。葬儀だというのに皆笑っていたからです。マイクを持って場を盛り上げる係がいるほどでした。

トンコナンの写真
タナトラジャにはトンコナンと呼ばれる伝統家屋(写真後ろ)があります。大きさと所有数で富を表しています。
ランブソロの様子の写真
一般的なランブソロでは牛は1頭か2頭だそうですが、今回は10頭越えでした。プログラムの中には競りも組み込まれていました。
混血の牛の写真
混血の牛は100万200万と高値がつきます。

会場を囲むように来客用のスペースも設けられていました。

地図の写真
ライブの席番のように数字が並べられた地図があり、ここが葬儀の会場だということを忘れそうになります。
建物の写真
番号が若ければ若いほど故人と関係が近く、建物の造りも大きいです。
ランブソロの写真
丸4日間かけて行われた(参加したのは3日目)本当に大掛かりなランブソロでした。

司会者の合図で村の男性たちが次々に牛の首を切っていきます。来客の方に突進してきたり痙攣したりする牛たちもいて動揺しました。そして皮を剥ぎ、肉を裂き、それぞれの家庭に持ち帰られていきました。

牛の角の写真
牛の角もまた富を表すシンボルだそうで、大事に取り扱われます。
トラジャ模様の写真
トラジャ模様と一緒に。花、流れる血、命をどう生きるか……
トラジャ族の独特の死生観が炙り出されています。

ちなみにランブソロの費用が足りないとき、ご遺体はホルマリンを打って(昔は草から出来た薬を塗っていた)家に保管しておくそうです。目で見て死をしっかり現実のものだとして受け止める意味も兼ねています。豚や鳥で行うときもあるそうです。

トラジャのお祭り男たちの写真
トラジャのお祭り男たち。ランブソロに日本人はほとんど来ないそうです。
ヨーロッパやオーストラリアからの観光客の方が目立ちました。

1つの命のために他の命を捧げる「生贄」。その概念は頭では分かっていたものの、目の当たりにしたのは初めてで怖気付くことしかできませんでした。生と死の狭間の薄さに、私たち人間も今たまたま生きているだけであって、命ってちっぽけだと思いながら会場を去りました。

トンコナンの写真
インドネシアは同じ国にいながら地域によって異文化のように新鮮な発見と驚きがある国です。
Writer
インドネシア 西ジャワ州
藤田 渚さん

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